食料品の消費税1%で、なぜレジ改修に最大350万円?店で変えるのは税率だけではない

「食料品の消費税が8%から1%になるなら、レジの設定を8から1に変えるだけでは?」

そう思う人は多いかもしれません。

共同通信は9月24日、政府が2027年4月に予定する飲食料品の消費税率引き下げに向け、中小企業・小規模事業者などのレジシステム改修費を最大350万円補助する方針だと報じました。2026年度予備費を充て、近く閣議決定する方向とされています。一方、中小機構は9月15日から、対象となるスマートレジ導入やPOS改修を先に進められる「事前着手制度」を案内しています。(共同通信 · 中小機構)

350万円と聞くと、「レジの税率を一つ変えるのに、なぜそんな金額が必要なの?」と感じます。

実は今のレジ、とくにPOSレジは単なる計算機ではありません。商品データ、売上、在庫、レシート、会計処理などが一つのシステムとしてつながっています。

そして今回の「最大350万円」は、税率の数字を書き換えるだけの費用を350万円まで出す制度でもありません。

スマートレジへの移行やPOSシステムの改修、それに伴うソフトウェアやサービスの導入まで含めた支援の上限です。

食料品の消費税1%への変更とレジ改修最大350万円補助の関係を示すイラスト

では、店では実際に何を変えなければならないのでしょうか。

そもそも、食料品の消費税は本当に1%になるの?

2027年4月以降に予定される飲食料品1%、新聞8%、外食や酒類10%の税率区分を示した図

政府の現在の方針では、2027年4月1日から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品の税率を1%に引き下げます。

2026年9月15日に政府が大綱を閣議決定しました。ただし国税庁も明記している通り、これは今後関連法案が国会で審議され、可決・成立した場合の制度です。(内閣官房 · 国税庁・財務省)

ここで意外なのが、すべての8%商品が1%になるわけではないことです。

現在の軽減税率8%には「酒類・外食を除く飲食料品」のほか、一定の定期購読新聞も含まれています。今回の引き下げ対象は飲食料品です。(国税庁)

整理すると、制度案では次のようになります。

区分 現在 2027年4月以降の予定
酒類・外食を除く飲食料品 8% 1%
一定の定期購読新聞 8% 8%
外食・酒類・その他の商品 10% 10%

つまり、店舗によっては1%・8%・10%という3種類の税率を同時に扱うことになります。

これが、レジの話を少し複雑にしている理由の一つです。


なぜレジは「8→1」と数字を変えるだけでは済まないの?

POSレジが商品マスター、在庫、レシート、会計システムと連動している構造を示す図

大規模なPOSでは、税率が商品データや会計処理など複数の仕組みと結び付いているためです。

たとえばスーパーなら、商品ごとに「この商品は1%」「これは10%」という税区分を持たせます。

その情報は会計時の計算だけではなく、

  • 商品マスター
  • 売上集計
  • 在庫管理
  • レシートの税率別表示
  • インボイス対応
  • 会計システムとの連携

などにも使われます。

そのため、あるシステムでは設定変更だけで対応できても、別の店舗では周辺システムの改修や動作確認まで必要になります。

内閣官房の実務者会議資料では、事業者へのヒアリング結果として、0%案ではPOS改修に「9~11.5カ月」、基幹・会計システムでは「1年程度」が必要との回答がある一方、1%案では「3カ月」または「5~6カ月程度」で対応可能との回答が示されています。システムの種類や事業者によって必要期間は異なるため、全国のレジが一律に同じ期間で改修できるという意味ではありません。(内閣官房・社会保障国民会議資料)

0%は一見もっと単純に見えます。

しかし実務者会議のヒアリングでは、0%対応ではPOSだけでなく基幹・会計システムまで確認や改修が広がるケースが示されました。一方、1%なら既存の税率変更に近い対応で済み、改修期間を短縮できるシステムもある、というのが今回の判断材料の一つです。


最大350万円は、いったい何に使えるの?

スマートレジ導入支援の最大350万円とハードウェア補助額を整理した図

350万円は、店のレジ設定変更代を一律で支払う金額ではありません。

9月24日の共同通信報道では、今回の支援はソフトウェア関連の改修だけでなく、マニュアル作成、導入研修、保守サポートも対象に含める方向で、企業規模に応じて補助率を変えるとされています。一部の中堅企業も対象とし、大企業は対象外と報じられています。(共同通信)

一方、土台となる「デジタル化・AI導入補助金」の現行インボイス枠では、スマートレジや会計・受発注・決済ソフト、関連ハードウェアに次の上限と補助率が設けられています。(デジタル化・AI導入補助金2026)

補助対象 補助額の上限 主な補助率
会計・受発注・決済など1機能のITツール 50万円 3/4以内、小規模事業者は4/5以内
2機能以上のITツール 350万円 50万円超部分は2/3以内
PC・タブレット等 10万円 1/2以内
レジ・券売機 20万円 1/2以内

(デジタル化・AI導入補助金2026)

たとえば「350万円のシステムを入れれば、350万円がそのまま戻ってくる」という意味ではありません。

補助率が設定されているため、事業者側の負担も残ります。

また対象となるITツールには条件があり、どんなレジやソフトでも自由に購入して後から補助を受けられるわけではありません。

ニュースで目立つ「最大350万円」は上限額であり、今回の税率引き下げ対応向け支援の細かな補助率や対象範囲は今後の公募要領などで確認する必要があります。


申請は2027年まで待たないといけないの?

2026年9月の事前着手から2027年1月の申請、4月の税率変更までを示したタイムライン

対象となる改修については、申請受付を待たずに準備を始められる特例が用意されています。

中小機構は、2026年9月15日以降に対象となるスマートレジの導入やPOS改修を行い、その後に補助金を申請できる「事前着手制度」を案内しています。

申請受付は2027年1月ごろの予定です。(中小機構)

流れを簡単に並べると、

時期 主な動き
2026年9月15日以降 対象となる導入・改修の事前着手が可能
2026年秋~ 店舗側がレジ・POSの準備を進める
2027年1月ごろ 補助金申請受付予定
2027年4月1日 法案成立を前提に飲食料品1%開始予定

となります。

ただし事後申請だからこそ、契約・納品・支払いなどの書類を残しておくことが重要です。

正式な対象製品や手続きは公募要領で確認する必要があります。


コンビニや飲食店では、なぜさらに複雑になるの?

コンビニと飲食店で1%、8%、10%の税率が使い分けられる例を示した図

たとえばコンビニを考えると分かりやすくなります。

弁当やおにぎりなどの持ち帰り用飲食料品は1%、酒類や一般商品は10%、一定の定期購読新聞は8%です。

飲食店ではさらに、同じ食べ物でも提供方法によって税率が変わります。

現在も「店内飲食は10%、持ち帰りは8%」ですが、制度案が実施されれば店内10%、持ち帰り1%となります。(国税庁)

税率差は2ポイントから9ポイントへ広がります。

レジ側は「商品名」だけではなく、どう販売したかまで正しく区分しなければなりません。

こうした店では、単に「8%という設定を全部1%に置き換える」と、逆に間違った課税につながる可能性があります。


では、食料品は7%分そのまま安くなるの?

税抜100円の商品が税率8%なら108円、1%なら101円になる計算例

税抜価格が同じなら、その分だけ税込価格は下がります。

たとえば税抜100円の食品なら、

  • 8%なら税込108円
  • 1%なら税込101円

です。

ただし、これは税抜価格が100円のままならという計算です。

商品の販売価格そのものは、原材料費や物流費、人件費などさまざまな要因で決まります。そのため、「税率が7ポイント下がるから、すべての商品価格も必ず同じ幅だけ下がる」とまでは言えません。

消費者にとっては値札が注目点ですが、店側ではその裏で税区分・レシート・会計データまで一緒に切り替える必要があります。


これから何を確認すればいい?

今回のニュースで最も大切なのは、2027年4月1日の1%化は政府の大綱に基づく予定で、関連法案はまだ国会で成立していないという点です。(国税庁・財務省)

今後は主に三つです。

  1. 関連法案が国会で成立するか
  2. 9月24日に報じられたレジ支援について、予備費の閣議決定や正式な公募要領で補助率・対象経費がどう確定するか
  3. 2027年4月までに店舗側の改修が間に合うか

特に事業者にとっては、「最大350万円」という数字だけを見るより、自分のレジが設定変更だけで済むのか、POSや会計まで改修が必要なのかを早めに確認する方が重要です。


ニュースほどきの一言まとめ

食料品の消費税を8%から1%にする話は、店のレジ画面で数字を一つ書き換えるだけではありません。

POSレジは商品、売上、在庫、レシート、会計などとつながっており、店舗によっては複数のシステムをまとめて対応させる必要があります。

そして「最大350万円」は、単なる税率設定変更費ではなく、スマートレジへの移行やPOS改修、関連ITツール導入を支援する制度の上限です。

しかも2027年4月以降は、店舗によって1%・8%・10%を同時に扱う可能性があります。

だから今回のレジ支援は、「減税のための設定変更」だけでなく、今後の税率変更にも対応しやすい仕組みへ移行する意味も持っています。


消費税1%、気になる疑問から読み解く

Q. 食料品の消費税1%はいつからですか?

政府の大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間を予定しています。ただし、関連法案が国会で可決・成立することが前提です。

Q. 食品なら何でも1%になりますか?

いいえ。対象は現在軽減税率の対象となっている飲食料品で、酒類や外食は含まれません。

Q. 新聞も8%から1%になりますか?

今回の引き下げ対象は飲食料品です。一定の定期購読新聞は8%が残るため、店舗によっては1%・8%・10%が並ぶことになります。

Q. レジ改修で全店舗が350万円もらえるのですか?

いいえ。350万円は対象となるITツール等の補助上限で、補助率や機能要件があります。申請すれば一律350万円が支給される制度ではありません。

Q. タブレットやレジ本体も補助対象ですか?

対象となるITツールと組み合わせるなど条件を満たせば対象になります。現在の案内ではPC・タブレット等は最大10万円、レジ・券売機は最大20万円です。

Q. 「スマートレジ」とは何ですか?

タブレットやスマートフォンなどをレジ端末として利用し、売上・在庫・顧客情報などをまとめて管理できるPOS型の仕組みです。

Q. なぜ0%ではなく1%なのですか?

内閣官房の実務者会議資料では、0%案でPOS改修に9~11.5カ月、基幹・会計システムに1年程度かかるとの回答がある一方、1%案では3カ月または5~6カ月程度との回答が示されました。事業者やシステムによって差はありますが、2027年4月からの実施可能性を高める判断材料の一つになっています。

Q. 補助金申請まで改修を待つ必要がありますか?

対象となる事業では、2026年9月15日以降に先に導入・改修し、後から申請できる「事前着手制度」が用意されています。申請受付は2027年1月ごろの予定です。

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂
これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

消費税1%の制度内容・現在の法的段階

内閣官房「飲食料品に係る消費税率の引下げ及び給付付き税額控除について」

国税庁・財務省「消費税率引下げ特設サイト」

国税庁「軽減税率制度の概要」

レジ改修・スマートレジ補助

デジタル化・AI導入補助金2026「スマートレジ導入支援」

中小機構「スマートレジの導入支援(事前着手制度)」

J-Net21「消費税率引き下げ対応 デジタル化・AI導入補助金」

最大350万円支援・改修期間

共同通信「レジ改修に最大350万円補助」

内閣官房「食料品消費税率ゼロ・1%の場合のシステム改修に関する事業者ヒアリング資料」

あわせて読みたい