米KFCが約40年のペプシをやめるのはなぜ?コカ・コーラへの切り替えで見えた競争の変化
「ケンタッキーで、ペプシが飲めなくなる?」
米国のKFC(ケンタッキーフライドチキン)が、長年扱ってきたペプシコ製品からコカ・コーラ製品への切り替えを決めました。2026年10月15日に発表された、新しい飲料供給契約です。
驚くのは、単なるドリンクメニューの変更ではないこと。KFCとペプシには、かつて同じ企業グループだったという歴史があります。その関係を見直してまで、なぜ今コカ・コーラなのでしょうか。

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。
先に押さえておきたいのは、今回の発表は米国のKFCが対象で、日本の店舗の飲料まで切り替わるという話ではないことです。そして、この契約だけでコカ・コーラの株価上昇やペプシ全体の業績を説明できるわけでもありません。
米KFCでは、いつから何が変わるのか?

米KFCのドリンクは、2027年1月から順次コカ・コーラ製品に変わり、同年春までに全米約3,600店舗へ広がる予定です。10月15日の発表時点で、すべての店舗が切り替わったわけではありません。
コカ・コーラとKFCの共同発表によると、今回の契約はコカ・コーラの各種飲料を米KFCに提供するものです。個々の店舗で扱う銘柄の詳細や契約金額については、発表資料だけでは確定できません。(コカ・コーラ公式発表)
日本の感覚では「チキンに合わせるコーラの種類を変えるだけ」に見えるかもしれません。しかし米国の大手外食チェーンにとって、飲料会社との契約は何千もの店舗で使う商品、機器、販促、サービスをまとめて決める重要な取引です。
なぜKFCとペプシは、そこまで深い関係だったのか?

そもそもKFCとペプシは、単なる取引先同士ではありませんでした。ペプシコは1986年にKFCを買収し、実際にその親会社だった時代があります。
その後、ペプシコは1997年にKFC、ピザハット、タコベルなどの外食事業を分離しました。分離先の企業は、後にヤム・ブランズ(Yum! Brands)となります。つまり、KFCはすでに長い間ペプシコの子会社ではありません。それでも飲料の取引関係は続いていたのです。(ペプシコ公式FAQ)
| 年 | KFCとペプシコの関係 |
|---|---|
| 1986年 | ペプシコがKFCを買収 |
| 1997年 | KFCなどの外食事業を分離 |
| 2026年10月 | 米KFCがコカ・コーラとの新契約を発表 |
| 2027年 | 米国内で飲料の切り替えを予定 |
この歴史を知ると、今回の発表の重みが変わります。かつて自社グループのレストランだったKFCが、米国事業で長年の飲料供給元を変更するからです。
ただし、これはKFCがペプシコとのあらゆる関係を断つという意味ではありません。海外の多くのKFCや、同じヤム・ブランズ傘下のタコベルでは、ペプシコの飲料供給が続くと報じられています。(Reuters)
それでも米KFCがコカ・コーラを選んだ理由は?

KFCが公式に示した理由は、米国事業の立て直しに向け、飲料の選択肢と店での体験を改善したいというものです。KFC米国法人のキャサリン・タン=ギレスピー社長は、新しい提携をブランド改革の一環と位置づけています。(コカ・コーラ・KFC共同発表)
チキンの味そのものが変わらなくても、セットで選べる飲み物やキャンペーンが変われば、食事の印象は変わります。大手チェーンにとって飲料は、単なる付け合わせではなく、来店の魅力をつくる商品でもあるわけです。
一方、報道や市場関係者は、米国の飲料市場でコカ・コーラとペプシコの競争が変化している点にも注目しています。コカ・コーラにとって大手外食チェーンとの取引拡大は、ブランドの接点を増やす機会です。ペプシコにとっては、長く付き合ってきた取引先を失う象徴的な出来事と受け止められています。(Reuters)
ただし、契約条件の詳細は公表されていません。「コカ・コーラが大幅に安く提示したから」「ペプシの味が不人気だから」といった理由を、確認された事実として断定することはできません。ペプシコの業績全体に与える直接的な金額も、現段階では慎重に見る必要があります。
日本のケンタッキーでも、ペプシがなくなるのか?

2026年10月17日時点では、日本のKFCがコカ・コーラに切り替わるという発表は確認されていません。 今回の契約は米国内のKFCについてのものです。
実際、日本KFCの公式メニューには、セットで選べるドリンクとして「ペプシコーラ」が掲載されています。米国での変更と日本の店舗メニューを同じ話として受け取らないことが大切です。(日本KFC公式メニュー · コカ・コーラ公式発表)
今後、日本側で別の契約変更が発表される可能性までは否定できません。しかし、それは今回の米国での決定から自動的に決まる話ではありません。
砂糖を控える人が増えても、コカ・コーラは成長している?

健康意識が高まり、糖分の多い飲み物を控える動きがあっても、コカ・コーラという企業全体の販売が必ず減るわけではありません。 同社は砂糖入りのコーラだけを売っているのではなく、ゼロシュガーや水、お茶、スポーツ飲料なども扱っているからです。
2026年7月28日に発表した同年4〜6月期決算では、次の数字が示されました。いずれも前年同期との比較です。(コカ・コーラ2026年4〜6月期決算)
| 指標 | 前年同期比 | 何を示す数字か |
|---|---|---|
| 世界の販売数量 | 5%増 | グループの飲料の販売量 |
| 売上高 | 7%増 | 会社が計上した売上高 |
| コカ・コーラ ゼロシュガーの販売数量 | 16%増 | ゼロシュガー製品の販売量 |
ここで混同しやすいのは、販売数量と売上高の違いです。売上高は、売れた量だけでなく、価格改定や売れ筋商品の構成、為替の影響でも変わります。今回の売上高7%増を「コーラを飲む人が7%増えた」と読み替えることはできません。
また、成長の中心は一つの国だけではありません。同四半期の販売数量はアジア太平洋地域で8%増、北米でも3%増でした。一方、地域によって価格・商品構成や市場シェアの動きは異なり、すべての国で同じ勢いが続いているわけではありません。(コカ・コーラ決算詳細)
米KFCとの新契約は、こうした既存の販売網に新たな提供場所が加わる話です。ただし、2026年4〜6月期の好調な決算は、10月に発表されたKFCの契約によって生まれた数字ではありません。 時系列も分けて考える必要があります。
コカ・コーラは、なぜ利益を生み出しやすいのか?

コカ・コーラの強みは、人気商品のブランドを持つだけではありません。飲料の原液やブランドを供給する本体と、実際に製造・配送する「ボトラー」が役割を分ける仕組みにもあります。
ボトラーは、原液などを仕入れて水や炭酸を加え、缶やペットボトルに詰めて店舗に届ける事業者です。本体がすべての国・地域で工場や配送網を直接運営するわけではありません。
例えるなら、店で売る商品のブランドや基本レシピを管理する側と、地域で商品をつくって運ぶ側が分かれているようなものです。本体はブランド、商品開発、マーケティングなどに経営資源を集中しやすくなります。
ただし、コカ・コーラ本体も一部の完成飲料事業を直接営んでいます。2025年の年次報告書では、連結売上高のうち原液などの事業が59%、完成飲料事業が41%でした。「製造をすべて外注している」「完成品の売上高は1割だけ」という説明は正確ではありません。(コカ・コーラ2025年Form 10-K)
もちろん、販売が落ち込むリスクが消えるわけではありません。消費者の健康志向、原材料費、物流費、飲料税、競争相手の値下げといった要因は、今後も業績に影響します。
バフェットがコカ・コーラ株を持ち続けてきた理由は?

長期投資家として知られるウォーレン・バフェット氏が率いてきたバークシャー・ハサウェイにとって、コカ・コーラは象徴的な投資先です。バークシャーは1988年に投資を始め、1994年に現在につながる4億株の取得を完了しました。その後も長期保有を続けてきました。(バークシャー1988年株主書簡 · バークシャー2022年株主書簡)
コカ・コーラの2026年の委任状関連資料では、バークシャーの保有株数は4億株、持ち株比率は約9.29%。また、バークシャーの2025年年次報告書には、次の数字が載っています。(コカ・コーラ株主資料 · バークシャー2025年年次報告書)
| 項目 | 金額・数量 |
|---|---|
| コカ・コーラ株の取得原価 | 約12億9,900万ドル |
| 2025年末の保有株評価額 | 約279億6,400万ドル |
| 2025年の受取配当金 | 約8億1,600万ドル |
| 保有株数 | 4億株 |
バフェット氏は過去の株主書簡で、1994年のコカ・コーラからの配当が7,500万ドルだったと振り返っています。2025年の8億1,600万ドルは、その約10.9倍。また、2025年に受け取った配当金だけで、帳簿上の取得原価の約63%に相当します。(バークシャー2022年株主書簡)
これは取得原価に対する年間配当の割合であって、株価の年間上昇率を示す数字ではありません。
さらにコカ・コーラは、2026年2月に四半期配当を1株0.51ドルから0.53ドルへ引き上げました。年間の増配はこれで64年連続です。4億株を保有し、四半期0.53ドルの配当が4回続くと仮定すると、年間受取額は約8億4,800万ドルになります。ただし、これは現在の配当水準による年換算であり、2026年の年間受取実績が確定したという意味ではありません。(コカ・コーラ2026年増配発表)
ここで「40年近く配当をコカ・コーラ株に再投資し続けたから、持ち株が増えた」と考えるのは早計です。今回の数字が示すのは、長く保有した株式が、企業の増配によって大きな配当収入を生むようになったということ。受け取った配当を同じ株に再投資することと、株数を維持して増配の恩恵を受けることは別です。
なお、これはバフェット氏個人の口座に入った配当ではなく、バークシャーという企業が受け取る配当です。また、同氏は2026年1月にバークシャーのCEOをグレッグ・アベル氏に引き継いでいます。(バークシャー2026年株主総会資料)
今回の乗り換えで、コカ・コーラの勝利は決まったのか?
米KFCとの契約は、コカ・コーラにとって販売先とブランド接点を広げる成果です。ただし、これをもってペプシコの飲料事業が終わるわけでも、コカ・コーラの今後の成長が保証されるわけでもありません。
ペプシコには米国内外でほかの飲料取引先があり、スナック・食品事業もあります。Reutersは今回の契約変更について、ブランド面では象徴的な打撃とみる一方、ペプシコの利益全体への直接影響は比較的小さいとの市場分析も伝えています。(Reuters)
次に確かめたいのは、2027年に切り替えが予定どおり進むか、KFCが想定する客の体験改善につながるか、そして両社の販売数量・利益率・市場シェアがどう変わるかです。長期投資の評価でも、ニュース一件だけではなく、事業の稼ぐ力を継続して見る必要があります。
【結論】このニュースは、こう理解すればいい
米KFCが約40年続いたペプシコとの飲料供給関係を見直し、2027年からコカ・コーラ製品に切り替えることになりました。1980年代にはKFC自体がペプシコ傘下だった歴史を考えると、単なるメニュー変更以上の意味があります。
背景にあるのは、米KFCのブランド立て直しと、外食店での飲料販売をめぐる競争です。コカ・コーラは販売数量、ゼロシュガー、ブランド運営などで成長を示していますが、契約金額や変更による将来の利益はまだ分かりません。
日本のKFCへの変更は今回発表されていません。バフェット氏ゆかりのバークシャーの巨額配当も、突然生まれた利益ではなく、長い保有期間と企業の増配が積み重なった結果です。
米KFCのコカ・コーラ切り替え、よくある疑問をまとめて整理
Q. 米国のケンタッキーでは、もうペプシを注文できない?
いいえ。2026年10月の発表時点では切り替え前で、コカ・コーラ製品への移行は2027年1月から順次始まる予定です。
Q. コカ・コーラへの変更は、全世界のKFCが対象?
いいえ。今回の共同発表は米国内約3,600店舗が対象です。海外のKFCに同じ変更が一斉に適用されるわけではありません。
Q. 日本のケンタッキーもコカ・コーラになる?
2026年10月17日時点で、日本での切り替え発表は確認されていません。日本KFCの公式メニューにはペプシコーラが掲載されています。
Q. なぜKFCとペプシは約40年も関係が続いたの?
ペプシコが1986年にKFCを買収し、1997年に外食事業を分離した後も飲料供給関係が続いたためです。現在のKFCがペプシコの子会社という意味ではありません。
Q. 米KFCはペプシの味が悪いから変更したの?
そうした理由は確認されていません。KFCは顧客体験とブランド改革を重視すると説明していますが、契約条件の詳細や味の評価を決定理由として断定できる資料はありません。
Q. コカ・コーラ ゼロシュガーは実際に売れている?
2026年4〜6月期の世界販売数量は前年同期比16%増でした。この数字はゼロシュガー製品の販売数量で、コカ・コーラ全社の利益成長率ではありません。
Q. バークシャーはいくらのコカ・コーラ配当を受け取った?
2025年の受取配当金は約8億1,600万ドルです。バークシャーの年次報告書に記載された実績で、バフェット氏個人の配当ではありません。
Q. 64年連続増配なら、これからも配当は必ず増える?
いいえ。64年連続というのは過去の実績です。今後の配当額は企業の業績や取締役会の判断によって変わり、将来も必ず増えると保証されたものではありません。
今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂 これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!
主な情報源
米KFCの契約変更と事業上の背景
Reuters:KFCの飲料供給先変更(2026年10月15日)
Reuters:ペプシコの外食事業への影響分析(2026年10月16日)