小学校から「情報」が増える?次の学習指導要領でAI・プログラミング教育はどう変わるのか

「小学生にも、いよいよ『情報』という新しい教科ができるの?」

「生成AIを学校で使うようになるの?」

さらに保護者にとって気になるのは、もう一つです。

情報の授業が増えるなら、国語や算数の時間はその分減るのでしょうか。

2026年9月25日、中央教育審議会の教育課程企画特別部会で、次の学習指導要領に向けた「審議まとめ案」が審議され、大筋で了承されました。柱の一つが、小学校から高校まで続く情報教育の大幅な拡充です。 (文部科学省 · 朝日新聞)

ただし、「小学校に情報科という独立した新教科が一つ増える」と理解すると少し違います。

ここをほどくと、今回の教育改革がかなり見えやすくなります。

小学校の情報教育拡充と生成AI・プログラミング学習の変化を表したイラスト

小学校に「情報」という新教科ができるの?

小学校と中学校の情報教育が現在からどう変わるかを比較した図

小学校では、「情報科」という独立した教科を新設する案ではありません。

現在の「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」へ改め、その中に「探究の領域」と並ぶ形で「情報の領域」を設ける方向です。文部科学省の議論では、情報の学習そのものを目的にするのではなく、各教科や探究活動を支える基盤として位置付けています。 (文部科学省)

一方、中学校は変化がもっとはっきりしています。

現在の「技術・家庭科」を再編し、「情報・技術科」と「家庭科」に分ける構想です。

学校段階 現在 次期学習指導要領の方向
小学校 各教科や総合の時間で情報活用を学ぶ 「総合的な探究の時間」に「情報の領域」
中学校 技術・家庭科 「情報・技術科」+「家庭科」
高校 情報科 小中での学びを踏まえてさらに充実

授業時数の案では、小学校3・4年生の「情報の領域」は年間最大30コマ程度、5・6年生は最大35コマ程度。中学校の「情報・技術科」は1・2年生で最大70コマ程度、3年生で最大35コマ程度が想定されています。 (時事通信出版局)

つまり、小学校では週1回前後の規模で情報についてまとまって学ぶ時間が見えてくる一方、中学校では教科の構造そのものが変わるわけです。


AIやプログラミングだけを勉強する時間なの?

情報教育の三つの柱である活用・適切な取扱い・特性の理解を説明した図

いいえ。「AIの使い方」や「プログラムの書き方」だけを教える構想ではありません。

文部科学省は、情報活用能力を大きく三つの要素で整理しています。 (文部科学省)

三つの要素 どんなことを学ぶ?
活用 情報を集める、整理する、表やグラフにする、伝える、プログラミングする
適切な取扱い 情報モラル、セキュリティ、権利、誤情報への対応、メディアリテラシー
特性の理解 コンピューターやネットワーク、AIなどがどんな仕組み・特徴を持つかを知る

例えば小学校では、インターネットで情報を集めたり、表やグラフを作ったり、スライドで分かりやすく表現したりする活動が想定されています。

同時に、「ネットに書いてあるから正しい」とそのまま受け取らず、情報源を確かめる力や、AIが間違った答えを出すことがあると理解する力も育てようとしているのです。

中学校に進むと、コンピューターや情報処理の仕組み、生成AIの基本的な特徴などを、より抽象的・科学的に学ぶ方向になります。

「パソコンを使える子を増やす」というより、情報を使い、疑い、仕組みまで理解できる力を段階的につくるのが今回の考え方に近いでしょう。


では、小学生も授業で生成AIを使うの?

小学校から高校まで生成AIとの関わり方が段階的に深まる様子を示した図

使う場面は増える可能性がありますが、最初から自由にAIへ質問させればよい、という考え方ではありません。

文部科学省はAIについて、「特性の理解」「適切な取扱い」「活用」という観点を、小・中・高校それぞれの発達段階に応じて整理しています。 (文部科学省)

小学校では特に、AIを使わせることを先にするのではなく、どんな特徴やリスクがあるのかを理解した上で、発達段階に応じて活用に触れる考え方です。文部科学省のガイドラインでも、小学校段階で児童が直接利用する場合は慎重な見極めが必要で、教師が生成AIとの対話例を示しながら基本事項を学ぶ方法などが示されています。 (文部科学省)

これはかなり大切な違いです。

「AI教育が始まる」からといって、ChatGPTのようなサービスの操作方法を覚える授業に変わるわけではありません。

AIが出した答えをそのままコピーするのではなく、

「この情報は本当に正しい?」

「別の資料と比べるとどうだろう?」

「なぜこの答えになったのか?」

と考える力まで含めて教育しようとしているのです。


情報の時間が増えたら、国語や算数の時間は減る?

総授業時数を増やさず既存教科から情報教育へ時間を再配分する仕組みを示した図

現在の案では、一部の既存教科の標準授業時数は減る方向です。

9月25日の審議では、小学3年生から中学3年生について、年間35コマ以下の教科などを除き、国語、算数・数学、理科、社会などの標準授業時数をおおむね3~4%程度減らす方向が示されました。詳細な削減幅は、学習指導要領の告示までに詰められる予定です。 (朝日新聞 · 文部科学省)

理由は単純です。

情報教育は増やしたい。

しかし、子どもの年間総授業時数はこれ以上増やさない。

そうすると、同じ大きさの時間割の中で配分を変える必要があるからです。

項目 方向性
年間の総授業時数 基本的に増やさない
情報教育 増やす
一部の既存教科 標準時数を約3~4%調整する方向
年35コマ以下の教科など 原則として削減対象外
詳細な削減幅 今後確定

ただし、「国語や算数で教える内容をそのままにして、時間だけ一律に削る」という話でもありません。

教科や学年間で重複する内容を整理し、学ぶ内容そのものを精選することもセットで検討されています。

したがって今後の焦点は、「何コマ減るか」だけではなく、限られた時間で何を残し、何を整理するのかにもあります。


2028年度から全部変わるの?

2028年度から2032年度までの情報教育と新学習指導要領の実施時期を示したタイムライン

いいえ。2028年度から新しい学習指導要領全体が一斉に始まるわけではありません。

情報教育については、全面実施より先に動かす計画です。

年度 現在示されている主な予定
2028年度 小学校「情報の領域」を先行実施
2029年度 中学校「情報・技術科」を先行実施
2030年度 小学校で次期学習指導要領を全面実施
2031年度 中学校で全面実施
2032年度以降 高校で入学生から順次実施

この工程は、9月25日時点で示されている次期学習指導要領の実施スケジュールに沿ったものです。 (共同通信)

つまり、ニュースで見る「2028年度から情報教育を先行実施」と、「2030年度から新しい学習指導要領」は矛盾しているわけではありません。

情報教育だけが先に走り出す計画なのです。


なぜ情報教育だけ、そんなに急いでいるの?

背景にあるのは、単なるIT人材不足だけではありません。

文部科学省は、生成AIを含む情報技術の急速な普及に加え、SNSを通じた偽情報・誤情報の拡散などを課題として挙げています。 (文部科学省)

つまり今回の改革で目指しているのは、

「子どもを早くからプログラマーにすること」ではなく、「デジタル社会で情報に振り回されずに考えられる力をつくること」

にあります。

一方で、実際に誰が教えるのかという問題も残ります。

中学校の技術分野では専門免許を持つ教員の確保が課題になっており、教材開発、教員研修、オンラインでの免許法認定講習などを進める方針です。 (文部科学省)

制度を作るだけでなく、2028年度の先行実施までに学校現場がどこまで準備できるかも重要なポイントになりそうです。


ニュースほどきの一言まとめ

今回の学習指導要領改訂は、「小学生にAIの使い方を教える」というだけの話ではありません。

小学校では「情報の領域」、中学校では「情報・技術科」、高校では情報科へとつなぎ、

情報を集める → 正しく扱う → 仕組みを理解する → 自分で考えて使う

という力を、小学校から段階的に育てようとする改革です。

そしてもう一つ重要なのが、年間の総授業時数を増やさないこと。

情報教育を増やす分、国語や算数・数学など既存教科の授業時数も少しずつ組み替えるため、今回の改訂は「情報」という一つの分野だけではなく、学校の時間割全体に関わる変更だと考えると分かりやすいでしょう。


学習指導要領、気になる疑問から読み解く

Q. 小学校に「情報科」という新しい教科ができますか?

独立した「情報科」を新設する案ではありません。「総合的な探究の時間」の中に「情報の領域」を設ける方向です。

Q. 小学校の情報教育はいつから始まりますか?

「情報の領域」は2028年度から先行実施する予定で、次期学習指導要領の小学校での全面実施は2030年度の予定です。

Q. 小学生は情報の時間に何を学びますか?

情報収集や整理・分析、表現、プログラミングに加え、情報モラル、メディアリテラシー、AIなど情報技術の特徴も段階的に学ぶ方向です。

Q. 小学生も生成AIを使うことになりますか?

生成AIの活用も想定されていますが、まず特性やリスク、適切な扱い方を理解した上で、発達段階に合わせて活用へ進む考え方です。

Q. プログラミング教育だけが増えるのですか?

いいえ。プログラミングは一部であり、「活用」「適切な取扱い」「特性の理解」の三つを組み合わせて情報活用能力を育てる構想です。

Q. 国語や算数の授業時間は減りますか?

現在の案では、小3から中3までの一部教科で標準授業時数を3~4%程度減らす方向です。ただし詳細な削減幅はまだ最終確定していません。

Q. 中学校の「情報・技術科」はどんな教科ですか?

現在の技術・家庭科を再編し、「情報・技術科」と「家庭科」に分けます。AIや情報だけではなく、現在の技術分野で扱う内容も含む教科です。

Q. 情報教育を増やすと学校の授業時間そのものも増えますか?

基本的には増やしません。年間の総授業時数を現在の水準に保ちながら、既存教科との配分を組み替える方向です。

Q. 高校の「情報」も変わりますか?

小学校・中学校で学んだ情報活用能力を土台に、高校では情報技術やAI、データなどをより深く学ぶ方向で内容の充実が検討されています。

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂
これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

9月25日の審議・授業時数の見直し

文部科学省「教育課程部会 教育課程企画特別部会(第18回)配付資料」

朝日新聞「小・中学校の授業数、各教科一律に3~4%削減 情報教育拡充で」

情報教育・生成AIの内容

文部科学省「情報・技術ワーキンググループ/生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ合同会議議事録」

文部科学省「学校現場における生成AIの利用について」

時事通信出版局「小中の情報教育、大幅拡充へ 中学は週2コマに倍増も―文科省案」

先行実施・教員体制

文部科学省「松本洋平文部科学大臣記者会見録(令和8年7月10日)」

共同通信「中教審、情報教育拡充の方針議論 次期学習指導要領」

あわせて読みたい