11月から電気代がまた変わる?「託送料金」が上がるとなぜ家庭の請求額まで増えるの?
「電気を作る燃料が急に高くなったわけでもないのに、なぜ電気代が上がるの?」
2026年10月2日、楽天でんきは11月1日からの料金改定後の単価を発表しました。東急パワーサプライも同じ日、対象プランの電気料金を11月1日から改定すると発表しています。理由として両社が挙げているのが、「託送料金」の見直しです。(楽天でんき公式・東急パワーサプライ)
ところが、託送料金と言われても、普段の生活ではほとんど目にしません。
「楽天でんきや東急でんきに払っているのに、誰に対する料金なの?」
「電線を使う費用が上がるだけで、なぜ自宅の請求額まで増えるの?」
そしてもう一つ気になるのが、電力会社を変えればこの値上げを避けられるのかという点です。
今回の改定は、発電するための燃料代そのものではなく、発電所から届いた電気を各家庭まで運ぶための「道路代」に近い費用が動く話です。

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。
そもそも「託送料金」って何のお金?

託送料金は、電気を家庭や店まで運ぶために送配電ネットワークを利用する料金です。
電気を売っている小売会社は、自前で全国の電柱や送電線を持っているわけではありません。地域の一般送配電事業者が管理する送電線、変電所、配電線、電柱などを使い、電気を利用者のもとまで届けてもらいます。
その利用料として、小売電気事業者が一般送配電事業者に支払うのが託送料金です。楽天でんきも、託送料金について「全国の電力会社が共通で負担する費用」と説明しています。(楽天でんき公式)
流れを単純化すると、こうなります。
| 役割 | 何をしている? |
|---|---|
| 発電 | 電気を作る |
| 小売電気事業者 | 契約者に電気を販売し、料金を請求する |
| 一般送配電事業者 | 送電線・変電所・電柱などを使って電気を運ぶ |
| 家庭・事業者 | 電気を使用し、小売会社に電気料金を支払う |
たとえるなら、電力の送配電網は「電気専用の道路」です。
スーパーが商品を販売していても、物流に道路や配送網が必要なのと同じように、電気を販売する会社も電気を家庭まで運ぶネットワークなしでは商売できません。
そして、この「道路の利用料」に相当するコストが小売会社の原価に含まれているため、託送料金が上がれば家庭向け料金にも影響が出るわけです。
なぜ2026年11月に託送料金が上がるの?

背景にあるのは、送配電設備を維持・更新するためのコスト増加です。
一般送配電事業者8社は2026年7月10日、託送料金の基礎となる「収入の見通し」の変更を国に申請しました。送配電網協議会は、その背景として物価、労務費、金利の上昇によって、2023~2027年度の第一規制期間を始めた時点の想定より費用が増えていると説明しています。(送配電網協議会)
現在の託送料金には「レベニューキャップ制度」という仕組みが使われています。
これは、送配電会社が必要な投資を行えるよう一定期間の収入見通しを設定しながら、同時に経営効率化も求める制度です。
ただ、最初に想定していた以上に資材費や人件費、金利などが上昇すれば、送電線や変電所を維持するために必要な費用も増えます。制度上は、こうした事業者自身ではコントロールしにくい費用変化について、一定の条件で途中調整する仕組みがあります。
8社の変更申請は2026年9月4日に経済産業大臣が承認し、各社は11月1日の新料金適用に向けて託送料金を見直しました。東急パワーサプライも9月11日の時点で、この承認を受けて託送料金改定を電気料金へ反映する検討を始めたと説明しています。(経済産業省・東急パワーサプライ)
全国どこでも同じように上がるの?

いいえ。全国一律で同じ金額が上がるわけではありません。
今回の動きを整理すると少し特殊です。
| エリア | 2026年11月の状況 |
|---|---|
| 北海道・東北・東京・中部・関西・四国・九州・沖縄 | 8社が「収入の見通し」を変更し、託送料金を改定 |
| 中国 | 8社の変更申請とは別に、託送料金単価を改定 |
| 北陸 | 今回は託送料金の改定なし |
中国電力ネットワークは、8社とは別の形で料金収入の減少などを踏まえて託送料金を見直し、2026年11月1日から低圧の平均単価を税抜きで1kWh当たり9.34円から10.46円へ変更すると発表しています。(中国電力ネットワーク)
一方、北陸エリアは今回の改定対象ではありません。
楽天でんきの11月料金でも、北海道、東北、東京、中部、関西、中国、四国、九州では単価が上がりますが、北陸は現行単価が維持されています。(楽天でんき公式)
つまり、「託送料金が上がる」という全国ニュースを見ても、自分の契約地域と料金プランを確認しないと実際の負担増は分からないということです。
家庭では実際いくらくらい増えるの?

ここは「何円上がる」と一つの数字では言えません。
契約している会社、料金プラン、地域、使用量によって違うからです。
分かりやすい例として、10月2日に確定単価を公表した楽天でんきの「プランS」を見てみます。改定されるのは1kWh当たりの従量料金単価で、北陸を除く各エリアで1.15~1.87円上昇します。(楽天でんき公式)
月300kWh使う家庭として、単純に「単価差×300kWh」で計算すると次のようになります。
| エリア | プランS単価の差 | 300kWh使用時の単純計算 |
|---|---|---|
| 北海道 | +1.67円/kWh | 約501円 |
| 東北 | +1.84円/kWh | 約552円 |
| 東京 | +1.15円/kWh | 約345円 |
| 中部 | +1.87円/kWh | 約561円 |
| 北陸 | ±0円/kWh | 0円 |
| 関西 | +1.30円/kWh | 約390円 |
| 中国 | +1.19円/kWh | 約357円 |
| 四国 | +1.54円/kWh | 約462円 |
| 九州 | +1.55円/kWh | 約465円 |
例えば東京エリアなら、36.85円/kWhから38.00円/kWhへ1.15円上がります。
300kWh使う月なら、
1.15円 × 300kWh = 約345円
という計算です。
ただし、これはあくまで楽天でんきプランSの従量料金単価だけを使った単純比較です。実際の請求額は市場価格調整、燃料費調整、再生可能エネルギー発電促進賦課金など、その契約に含まれる別の項目でも動きます。
「託送料金の改定=どの家庭も毎月同じ金額だけ値上げ」と考えるのは正確ではありません。
電力会社を乗り換えれば、託送料金の値上げは避けられる?

託送料金そのものを完全に避ける目的で小売会社を変更するのは難しいと考えた方が分かりやすいでしょう。
同じ地域に住んでいる限り、楽天でんき、東急でんき、その他の新電力に契約を変えても、家庭まで伸びている送電線や電柱が別会社の設備に突然入れ替わるわけではありません。
小売会社はそれぞれ、地域の一般送配電事業者のネットワークを利用します。
ただし、ここで「どの会社を選んでも最終料金は同じ」と考えるのも違います。
楽天でんきは今回、プランSなどの従量料金単価に改定分を反映しました。東急パワーサプライも対象プランの料金単価を改定し、11月1日使用分から日割りで新料金を適用するとしています。(楽天でんき公式・東急パワーサプライ)
つまり、
送配電コストの上昇は共通して受ける一方、それを料金のどの項目へ、どの程度、どのタイミングで反映するかは小売会社やプランによって違う
ということです。
乗り換えを考えるなら、「託送料金があるかないか」ではなく、改定後の基本料金、従量料金、各種調整額、ポイントやセット割などを含めた総額で比較する必要があります。
11月の請求額が上がっても、原因が全部「託送料金」とは限らない

電気料金の明細は、一つの価格だけでできているわけではありません。
代表的には、
| 主な要素 | 何で変わる? |
|---|---|
| 基本料金 | 契約アンペア・容量や料金プラン |
| 電力量料金 | 使用したkWhと契約単価 |
| 燃料費・市場価格などの調整 | 燃料価格、卸電力市場など |
| 再エネ賦課金 | 国が年度ごとに設定する単価 |
| 政府の料金支援 | 実施される期間と値引き単価 |
などが組み合わさります。料金プランによって名称や計算方法は異なります。
2026年には国による夏の電気・ガス料金支援も行われ、原則として7月~9月使用分が対象でした。低圧電力では7月と9月が3.5円/kWh、8月が4.5円/kWhの値引きです。(資源エネルギー庁)
つまり秋以降の請求額を見る時には、
「託送料金が変わった影響」
と、
「政府の値引きがなくなった影響」
さらに、
「燃料費や市場価格の変動」
を分けて考える必要があります。
請求額が前月より500円増えたからといって、その500円すべてが託送料金の改定分とは限りません。
では、11月以降の電気料金で何を確認すればいい?
確認したいのは、まず契約している電力会社から届く「料金改定のお知らせ」です。
特に次の4点を見ると整理しやすくなります。
- 新料金はいつの使用分から適用されるのか
- 基本料金と1kWh当たり単価のどちらが変わるのか
- 自分の地域が今回の託送料金改定対象なのか
- 月の使用量を掛けると、おおよそいくら差が出るのか
「11月1日改定」と書かれていても、請求書に表れる月は会社の検針や請求サイクルによって同じとは限りません。
例えば東急パワーサプライは新料金を11月1日使用分から日割り適用し、その差額分を1月請求分で請求すると案内しています。一方、楽天でんきは11月1日からの使用量について新単価を適用するとしています。(東急パワーサプライ・楽天でんき公式)
そのため、「11月から値上げ」と「11月に届く請求書がすぐその金額になる」は同じ意味ではありません。
【結論】このニュースは、こう理解すればいい
2026年11月の電気料金改定でポイントになる「託送料金」は、電気そのものの値段ではなく、送電線や変電所、電柱などを使って電気を家庭まで運ぶためのネットワーク利用料です。
物価、労務費、金利などの上昇で送配電網を維持するコストが増えたことなどを背景に、北陸を除く各地域で11月から託送料金が見直されます。
小売電気事業者はこの費用を負担しているため、楽天でんきや東急でんきのように家庭向け料金へ反映する会社が出ています。
ただし、全国の家庭が同じ金額だけ上がるわけではありません。
地域、契約会社、料金プラン、使用量によって影響は違います。さらに最終的な請求額には燃料費や市場価格、再エネ賦課金、政府支援の終了など別の要因も関係します。
今回のニュースを見る時は、「電気そのものが高くなった」というより、「電気を運ぶネットワークの利用コストが上がり、その分が小売料金へ反映され始めた」と考えると分かりやすいでしょう。
託送料金、気になる疑問から読み解く
Q. 託送料金とは何ですか?
電気を送電線、変電所、配電線、電柱などを通じて利用者まで届けるために、小売電気事業者が一般送配電事業者へ支払うネットワーク利用料です。
Q. 消費者が託送料金を送配電会社に直接払うのですか?
通常は直接払いません。小売電気事業者が送配電事業者へ支払い、そのコストが小売電気料金を構成する原価の一部になります。
Q. なぜ2026年11月に値上げされるのですか?
送配電設備を維持・更新するための物価、労務費、金利などが当初の想定以上に上昇したことなどを受け、託送料金の見直しが行われるためです。
Q. 全国すべての地域で同じように上がりますか?
いいえ。北陸エリアは今回の改定対象ではなく、地域ごとの改定幅も異なります。 中国エリアも他の8社とは異なる経緯で料金を見直しています。
Q. 楽天でんきはどのくらい上がりますか?
家庭向けプランSでは、北陸を除く各エリアで1kWh当たり1.15~1.87円上がります。例えば東京エリアでは36.85円から38.00円へ、1.15円/kWhの上昇です。
Q. 電力会社を乗り換えれば託送料金を払わなくて済みますか?
基本的にはそうではありません。同じ地域の小売電気事業者は同じ地域の送配電ネットワークを利用します。ただし、託送料金の変動を小売料金へどう反映するかは会社やプランによって異なります。
Q. 「11月1日値上げ」なら11月の請求書からすぐ高くなりますか?
必ずしもそうとは限りません。11月1日使用分から新単価を適用しても、検針日や請求サイクルによって実際の請求時期は異なります。
Q. 11月以降に電気代が増えたら、全部託送料金のせいですか?
いいえ。電気料金には燃料費や市場価格の調整、再エネ賦課金などもあり、2026年夏に実施された政府の料金支援も原則9月使用分までです。前月との差額すべてを託送料金だけで説明することはできません。
今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂 これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!
主な情報源
11月1日の電気料金改定
楽天でんき「託送料金の値上げに伴う楽天でんき料金改定および新単価のお知らせ」
託送料金見直しの背景・承認
送配電網協議会「一般送配電事業者による『託送供給等に係る収入の見通し』の変更承認申請について」
経済産業省「一般送配電事業者8社の託送供給等に係る収入の見通しの変更承認申請を承認しました」
中国エリアの改定・政府の料金支援
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