SBI証券で779口座が誤ロスカット…勝手に決済された取引は元に戻せる?

「証拠金は足りているはずなのに、勝手にFXの取引が決済された?」

そんなことが実際に起きました。

SBI証券のFX取引で、本来なら続けられたはずの取引がシステムの誤りによって強制決済されてしまったのです。

しかも、問題が起きたのは779口座。株式を担保にしてFXを取引するサービスで、担保として預けていた株式の評価額が、保証金の計算から抜け落ちていました。

では、強制的に決済された取引は元に戻せるのでしょうか。

SBI証券は2026年10月14日、障害がなかった場合の状態に戻すことを基本方針として発表しました。ただし、すべての口座を同じ方法で復元できるわけではありません。(SBI証券)

SBI証券のFX株券担保サービスで779口座が誤ロスカットされた問題を表現したイラスト

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。

今回の出来事を理解するには、「ロスカット」という仕組みと、株式がFXの保証金になる特殊なサービスを知る必要があります。

そして、もう一つ大事なのが、取引を復元することと、損失を現金で補償することは同じではないという点です。

779口座では、何が勝手に決済されたのか?

株式の担保評価額が反映されずFXの強制決済につながった仕組みを示す図

今回、誤って決済されたのはFXの「ポジション」です。

ポジションとは、例えば「米ドルを買って円を売った状態」のように、まだ決済していない取引の持ち高を指します。

FXでは通常、必要な保証金が一定の水準を下回ると、損失がさらに膨らむことを防ぐため、保有ポジションが自動的に決済される場合があります。これが「ロスカット」です。

本来、ロスカットは取引のリスクを抑えるための仕組みです。

ところが、今回のSBI証券のシステムでは、実際には保証金として認められる株式があるのに、その価値を反映せず、保証金が不足していると誤って判定してしまいました。

その結果、2026年10月12日の取引開始から13日未明にかけて、779口座で本来不要な強制決済が発生しました。13日午前5時30分にシステムは復旧しています。(SBI証券 · ITmedia NEWS)

ここで誤解しやすいのが、「株式を担保にしていた」という部分です。

今回の発表は、預けていた株式が一斉に売却されたという話ではありません。株式の担保価値がFXの保証金に反映されず、その結果としてFXのポジションが誤って決済されたという問題です。


株を持っているだけなのに、なぜFXの保証金が増える?

株式100万円相当を70%の代用掛目で70万円相当のFX保証金として評価する例を示した図

通常、FXを取引するときには保証金が必要です。

しかしSBI証券には、現金だけでなく、保有している国内株式を担保としてFXの保証金に充てられる「FX株券担保サービス」があります。

つまり、株式を売って現金に換えなくても、所定の条件を満たす株式の価値をFXの保証金として利用できる仕組みです。

SBI証券の公式案内では、対象株式の数量と参考価格に「代用掛目」を掛け合わせて代用評価額を算出します。代用掛目はおおむね70%ですが、銘柄や市場の状況などによって変更される場合があります。(SBI証券・株券担保サービス)

例えば、対象となる株式を100万円分保有し、代用掛目が70%だったとしましょう。

項目 説明用の例
担保にする株式の評価額 100万円
代用掛目 70%
FX保証金としての評価額 70万円

この70万円は、実際に現金70万円を新たに受け取るという意味ではありません。

株式の価値を一定の割合で換算し、FX取引の保証金に組み込むということです。

今回の障害では、この「株式の価値を保証金に組み込む」という処理が正常に機能しませんでした。

現実の株式保有状況と、システムが把握している保証金の額に食い違いが生じたのです。

なお、株券担保サービスを正常に利用している場合でも、株価の下落やFXの損失、代用掛目の変更などによって保証金が不足し、正当なロスカットが発生する可能性はあります。

今回問題になったのは、通常の投資リスクによるロスカットではなく、システムが担保情報を正しく計算しなかったことによる誤ロスカットです。


10月10日の作業ミスが、なぜ12日の強制決済につながった?

10月10日のファイル処理ミスから12日の誤ロスカット、13日の復旧までの流れ

原因は、外部委託先の作業ミスと、そのミスを途中で止められなかったシステムの設計・運用にありました。

SBI証券の調査によると、実際に処理を誤ったのは10月10日未明です。

このとき、株式の担保情報を含むファイルの到着が予定より遅れました。

必要なファイルは午前1時25分までに用意されていましたが、担当者は別の処理と取り違え、正しい手順で取り込みを再実行しませんでした。

そして午前3時19分、担保情報と株価の終値情報の2つのファイルを取り込まないまま、後続の処理を進めてしまいました。

さらにシステム側も、必要なファイルがすべてそろっているかを確認しない設計・運用だったため、処理が止まりませんでした。(SBI証券)

流れを整理すると、次のようになります。

日付 起きたこと
10月10日(土) ファイルの取込処理で作業ミス
10月12日(月・祝) FX取引開始後、誤ロスカットが発生
10月13日(火) 午前5時30分に障害復旧
10月14日(水) SBI証券が原因と対応方針を正式発表

なぜ、ファイルが不足していたのに処理を続けられたのでしょうか。

ここには、人間の操作だけでなく、システムの仕組みにも問題がありました。

必要な情報がそろわなければ計算を進めない設計であれば、少なくとも今回のような連鎖を途中で食い止められた可能性があります。

今回の事故は、一つの作業ミスが自動取引システムの判断にまで影響した事例と言えます。


407口座は復元、372口座は個別対応。何が違う?

誤ロスカットされた779口座を407口座の復元済みと372口座の個別対応に分けた図

SBI証券は、障害がなかった場合の状態にポジションを戻すことを基本に対応すると発表しました。

ただし、779口座を一律に復元したわけではありません。

違いを決めたのは、誤ロスカットの後に利用者が別の取引や操作を行ったかどうかです。

対象 口座数 SBI証券の対応
誤ロスカット後に取引・入出金・株式の振替指示がなかった口座 407口座 10月13日にポジション復元済み
誤ロスカット後に上記いずれかの操作があった口座 372口座 利用者の意向を確認して個別対応
ロスカットを避けるため自ら決済した利用者など 口座数未公表 意向を確認して個別対応

この表の上2行が779口座の内訳です。最後の「自ら決済した利用者など」は、別途個別対応すると公表された対象で、口座数は示されていません。

407口座については、10月13日午前4時から5時30分までの臨時メンテナンスで、ロスカット前のポジションに復元されました。

ただし、復元を希望しない利用者からの申し出も受け付けています。

一方の372口座では、その後の取引や資金移動などに影響が及ぶ可能性があるため、SBI証券は一律の復元を行わず、個別に対応する方針です。(SBI証券)

なぜ自動で元に戻してはいけない場合がある?

例えば、システムによってドルの買いポジションを勝手に決済された人が、その後、自分の判断で新しくドルを買い直したとします。

その状態で証券会社が以前のポジションを一方的に復元すると、利用者が想定していない取引を二重に保有することになりかねません。

また、誤ロスカット後に資金を入出金したり、担保株式を振り替えたりした場合も、単純に過去の状態へ戻すだけでは現在の口座状況との整合が取れなくなるおそれがあります。

そのため、372口座については、利用者が復元を望むかどうかを確認し、個別に調整する必要があるのです。

ここでの「復元」とは、単に取引履歴から誤った記録を削除することではありません。

FXで保有していた取引上の持ち高を、障害がなかった場合の状態に近づけるための対応です。


「元に戻す」とは、損失を全額現金で補償する意味?

必ずしもそうではありません。

今回、SBI証券が基本方針として示したのは、障害が起きなかった場合の状態への「ポジションの復元」です。

取引によって生じたあらゆる損益を、現金で一律に補償すると発表したわけではありません。

2026年10月14日の公式発表では、407口座の復元と372口座への個別対応などが説明されていますが、全口座共通の現金補償額や算定方法は示されていません。(SBI証券)

なぜ、取引を元に戻すだけでは話が終わらないのでしょうか。

FXは為替レートが動き続ける取引です。

誤ロスカットされた時点と、その後の為替レートが同じとは限りません。

例えば、強制決済の後に為替相場が大きく動いていた場合、元のポジションを復元することと、その間の経済的な不利益をどう扱うかは別の問題になります。

逆に、利用者が誤ロスカット後に別の判断で取引を行っていた場合、その行動まで無視して元の状態に戻すことは適切とは限りません。

したがって、今回の問題では次の3つを分けて考える必要があります。

項目 意味
システム復旧 担保評価額を正しく計算できる状態に戻す
ポジション復元 誤って決済されたFXの持ち高を戻す
損失への補償 障害に伴う経済的不利益をどう扱うか判断する

システムが復旧したことと、個々の利用者への対応がすべて完了したことは別です。

実際にどのような損益調整や補償が行われるかは、利用者ごとの取引状況とSBI証券の個別対応を確認する必要があります。


作業したのはIIJなのに、なぜSBI証券の問題なのか?

SBI証券からSBIリクイディティ・マーケット、IIJへとつながるシステム運用の委託構造

今回のシステム障害では、実際に処理を誤った担当者が所属していたのは、SBI証券そのものではありませんでした。

システム運用には、複数の企業が関わっていました。

  • SBI証券:利用者にFXサービスを提供する証券会社
  • SBIリクイディティ・マーケット:SBI証券からFXシステムの運営を委託された企業
  • インターネットイニシアティブ(IIJ):運用業務の一部を再委託された企業

SBI証券の発表によると、直接の作業ミスはIIJの運用担当者によるものでした。

ただし、委託先が行った作業だからといって、SBI証券が利用者への対応から離れるわけではありません。

SBI証券は、再委託先の手順の見直しに加え、委託先を含めた管理体制を点検し、自社による監督を強化する方針を示しています。(SBI証券)

今回の問題を「担当者が間違えたから」で終わらせてはいけない理由も、ここにあります。

金融取引を動かすシステムは、複数の企業や処理工程で構成される場合があります。

本来必要なデータが欠けているなら、その段階で異常を発見して処理を止める仕組みが求められます。

SBI証券は今後、ファイル連携時の確認・再実行手順の見直し、委託先の監督強化、障害発生時の利用者への情報提供改善などに取り組むとしています。


自分の口座は対象?何を確認すればいい?

SBI証券のFX株券担保サービス利用者が障害通知と取引履歴を確認する手順

今回の障害の対象として発表されたのは、SBI証券の「FX株券担保サービス」です。

SBI証券の株式取引やNISAなど、すべての口座で同じ障害が起きたという発表ではありません。

対象者には、10月13日にSBI証券のウェブサイトへログインした後の「重要なお知らせ」などを通じて個別の案内が行われています。(SBI証券)

利用者が確認する際は、次の順番が考えられます。

  1. SBI証券の公式サイトや正規アプリからログインする。
  2. ログイン後の「重要なお知らせ」に、今回の障害に関する案内があるか確認する。
  3. 10月12日から13日にかけてのFX取引履歴やロスカットの有無を確認する。
  4. 誤ロスカット後に取引や入出金、株式の振替指示を行ったか整理する。
  5. 対象と考えられる場合は、SBI証券の正規窓口で復元方針などを確認する。

特に注意したいのは、今回の障害に便乗した不審な連絡です。

SBI証券は公式発表の中で、今回の件に関して利用者のユーザーネームやパスワードなどを尋ねることはないと注意喚起しています。

「補償手続きのためにログインが必要」などと書かれたメールやSMSが届いても、そのリンクから安易に個人情報を入力しないことが大切です。


【結論】このニュースは、こう理解すればいい

SBI証券のFXで起きた779口座の誤ロスカットは、利用者の担保株式の評価額が正しく反映されず、システムが保証金不足と誤って判定したことで発生しました。

原因は、再委託先でのファイル処理ミスと、そのミスを検知できずに処理が進んだシステムの設計・運用にあります。

SBI証券は、障害がなかった場合の状態にポジションを戻す方針を示しています。

  • 407口座は10月13日にポジションを復元済み
  • 372口座は、その後の取引などとの関係から個別対応
  • 自ら決済してロスカットを回避した利用者なども個別対応の対象

ただし、ポジションを復元することと、経済的な損失を現金で補償することは別の話です。

今回の障害は、正しい取引判断を行うためのデータが欠けると、利用者が意図しない強制決済につながり得ることを示しました。

今後は、個別対応がどこまで進むのかに加え、必要なデータが欠けたまま取引処理が進まない仕組みを確立できるかが問われます。


SBI証券の誤ロスカット、気になる疑問から読み解く

Q. SBI証券の779口座では、株式が勝手に売られたのですか?

今回誤って強制決済されたのはFXのポジションです。担保株式の評価額が保証金に反映されなかったことが原因で、株式そのものが779口座で売却されたという発表ではありません。

Q. 779人全員が損失を受けたという意味ですか?

779という数字は、誤ロスカットが発生した口座数です。利用者の人数や実際の損失額を示したものではありません。

Q. 407口座は完全に元どおりになったのですか?

SBI証券は10月13日にロスカット前のポジションへ復元したと発表しています。ただし、復元を望まない利用者の申し出を受け付けており、すべての損益上の問題が解決したと断定するものではありません。

Q. 残り372口座は復元してもらえないのですか?

復元できないと決まったわけではありません。誤ロスカット後に別の取引や入出金などがあったため、利用者の意向を確認して個別に対応する方針です。

Q. 誤ロスカットの補償金額はいくらですか?

2026年10月14日の公式発表では、全口座に共通する現金補償額は示されていません。個々の対応内容はSBI証券の案内を確認する必要があります。

Q. SBI証券のシステム障害はもう復旧したのですか?

はい。担保評価額が反映されない障害は10月13日午前5時30分に復旧したと発表されています。ただし、個別の取引復元などの対応完了とは別です。

Q. 今回の障害はハッキングが原因だったのですか?

いいえ。SBI証券は外部からの不正アクセスではなく、運用上の作業ミスが原因であり、個人情報や資産情報の流出も生じていないと説明しています。

Q. 自分が対象口座かどうか、どこでわかりますか?

SBI証券の公式サイトへログインした後の「重要なお知らせ」などを確認してください。対象者には個別案内が行われており、不明点は正規の問い合わせ窓口で確認するのが確実です。

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂

これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

障害の原因・対象口座・復元方針

SBI証券|FX株券担保サービスにおけるシステム障害の発生とお客さまへの対応について(2026年10月14日)

ITmedia NEWS|SBI証券のFXで誤ロスカット、779口座が対象(2026年10月14日)

ASCII.jp|SBI証券、779口座で誤ったロスカット 原因はIIJの作業ミス(2026年10月14日)

FX株券担保サービスの仕組み

SBI証券|株券担保サービスとは

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