訪日客が減ったのに観光消費額は過去最高?日本のインバウンドに何が起きている?

「外国人旅行者が減っている」というニュースを見たのに、今度は「観光消費額が過去最高」だといいます。

人が少なくなれば、ホテルや飲食店、土産物店に落ちるお金も減りそうです。なのに、どうして反対の結果になったのでしょうか。

2026年10月21日に公表された統計では、1~9月の訪日客数は前年同期比2.9%減、旅行消費額は1.9%増でした。人数とお金の動きは、必ずしも一致しません。旅行者がどこから来て、1人が何にいくら使うのかを分けて見ると、今回の数字が理解しやすくなります。(共同通信)

日本を訪れる外国人旅行者の減少と観光消費額の増加を対比したイラスト

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。

まず、訪日客はどれくらい減り、消費額はいくら増えた?

2026年1~9月の訪日客数3073万200人と旅行消費額7兆574億円の前年比を比較した図

2026年1~9月に日本を訪れた外国人は、推計3,073万200人。前年同期より2.9%減りました。一方、同じ9カ月の外国人旅行消費額は速報値で7兆574億円となり、前年同期を1.9%上回って過去最高を更新しています。(日本政府観光局 · 共同通信)

指標 2026年1~9月 前年同期比
訪日外客数 3,073万200人 −2.9%
訪日外国人旅行消費額 7兆574億円 +1.9%

ここで比べているのは、どちらも2026年1~9月の数字です。「9月だけの旅行者数」と「9カ月分の消費額」を混ぜているわけではありません。

なお、訪日外客数は入国管理統計を基にした人数で、観光以外の目的で来日した人も一部含みます。一方、旅行消費額は観光庁の別の調査による推計です。この二つを単純に割った数字を、そのまま公式の『1人当たり消費額』と考えることはできません。(日本政府観光局 · 観光庁)


人数が減っても消費が増えるのは、どういう仕組み?

旅行者数が減っても1人当たり支出が増えれば消費総額が伸びる仕組みを示した図

旅行消費額は、大まかにいえば「旅行者の数」と「1人が使う金額」の組み合わせで決まります。人数が少し減っても、1人がより多く使えば、合計額は増えます。

たとえば仮に、100人が1人1万円ずつ使えば合計100万円です。旅行者が97人に減っても、1人が1万600円を使えば102万8,200円になります。人数は減ったのに、使われたお金は増える計算です。

今回、実際の統計にもその方向を示す数字があります。観光庁が10月21日に発表した2026年7~9月期の旅行消費額は2兆2,076億円で前年同期比3.2%増。同じ四半期の一般客1人当たり旅行支出は約23万4,000円で、6.1%増でした。(観光庁)

ただし、この6.1%増は7~9月の1人当たり支出です。1~9月全体の訪日客数2.9%減と、期間の違う数字を直接掛け合わせて消費額を計算することはできません。大切なのは、少なくとも直近の四半期に「1人当たりに使う金額が増えた」という動きが確認できることです。


中国からの旅行者が減っても、韓国や台湾からは増えている?

2026年9月の韓国、台湾、中国からの訪日客数と前年同月比を比較した図

訪日客の減少は、すべての国・地域からの旅行者が一様に減った結果ではありません。中国からは大幅に減少する一方、韓国と台湾からは増加しています。

9月の実績を並べると、違いがはっきりします。(日本政府観光局 · 時事通信)

国・地域 2026年9月の訪日客数 前年同月比
韓国 84万2,300人 +25.6%
台湾 59万5,600人 +13.0%
中国 43万800人 −44.5%

韓国と台湾はいずれも9月として過去最多でした。全体では9月の訪日客数が310万3,700人と5.0%減っていますが、伸びている市場もあるのです。(日本政府観光局)

人数だけでなく、使う金額の構成も変わっています。7~9月期の国・地域別消費額では台湾が3,818億円で最も多く、中国3,583億円、韓国2,938億円と続きました。中国は前年同期比39.8%減でしたが、台湾は26.2%増、韓国は45.8%増でした。(トラベルボイス · 観光庁)

つまり、「どこから来るか」が変われば、観光地で使われるお金の流れも変わるということです。


中国人旅行者は、なぜこれほど減ったのか?

中国からの訪日客減少には、日中関係の緊張と航空便の減少が関係しています。2025年11月の高市早苗首相による台湾有事に関する国会答弁を受け、中国政府が日本への渡航を控えるよう呼びかけたことが背景にあると報じられています。(共同通信 · Reuters)

共同通信によると、2026年1~9月の中国人訪日客数は前年同期比55.5%減でした。先ほどの表の「9月だけでは44.5%減」という数字とは、対象期間が違います。(共同通信)

もっとも、訪日客全体の増減を日中関係だけで説明することはできません。JNTOは9月の状況について、中東情勢に伴う航空券価格の上昇、航空便の減便、台風による欠航なども挙げています。愛知県で開かれたアジア競技大会に伴う来日需要もありました。(日本政府観光局)

中国の落ち込みは大きな要因ですが、他の市場には別の増減要因もある。国籍・地域別に見る必要があるのは、そのためです。


旅行者は日本で何にお金を使っている?

2026年7~9月期の訪日外国人旅行消費額における宿泊、買物、飲食の構成比を示した図

外国人旅行者の支出というと、百貨店やドラッグストアでの買い物を思い浮かべるかもしれません。しかし、直近の統計では最も大きいのは宿泊費です。

観光庁の2026年7~9月期の調査を費目別に見ると、消費額全体のうち宿泊費が35.2%、買物代が27.7%、飲食費が22.9%を占めました。交通費や娯楽等サービス費も含まれます。(トラベルボイス · 観光庁)

主な支出項目 2026年7~9月の構成比
宿泊費 35.2%
買物代 27.7%
飲食費 22.9%

旅行で使われるお金は、ホテル、レストラン、店舗、交通機関、観光体験などに分かれます。そのため、訪日客数と小売店の売上だけを見ても、インバウンド消費の全体像はつかめません。

ただし、支出額が増えたことだけで、商品やサービスを購入する回数が増えたとは言えません。 宿泊料金などの価格変化、旅行者の構成、滞在の仕方なども関係するからです。今回の数字だけで増収の理由を一つに決めつけないことが大切です。


消費額が過去最高なら、観光地はどこも好調なのか?

そうとは限りません。全国の旅行消費額が伸びても、地域や業種ごとに旅行者の増減と支出の変化は異なります。

たとえば、外国人宿泊客が減った地域と、訪日客の飲食・買い物需要が伸びた地域では、受け止め方が違うでしょう。全国の消費額が増加しても、個々のホテルや店の売上、利益が同じように伸びたとは限りません。

また、訪日外客数と「外国人延べ宿泊者数」は別の統計です。後者は1人が複数泊すると、その泊数分を数えます。人数の増減をそのまま宿泊施設の利用動向とみなさないことも必要です。(観光庁)

今の日本の観光を考えるうえでは、全国一律の「好調」「不調」よりも、どの市場から、どの地域に来て、何に支出しているかという内訳が重要になります。


インバウンドの今後を見るなら、どの数字を追えばいい?

まずは、訪日客数、1人当たり支出、国・地域別の動きを合わせて見ることです。これらを別々に確認すれば、客数が戻っているのか、客単価が上がっているのか、旅行需要の中心が変わっているのかを区別できます。

2026年9月の訪日客数は前年同月比5.0%減でしたが、韓国や台湾など7市場は9月として過去最多でした。日本政府観光局も、旅行者数や旅行消費額に加え、地方部の宿泊など複数の指標を見ながら訪日旅行の動向を分析していく方針を示しています。(日本政府観光局)

特に、中国からの訪日客減少が続くか、韓国・台湾などの伸びが維持されるか、1人当たりの支出増が一時的なものかは、これからの統計で見極める必要があります。


【結論】このニュースは、こう理解すればいい

2026年1~9月、日本を訪れた外国人は前年同期比2.9%減りました。それでも旅行消費額は7兆574億円、1.9%増で過去最高になりました。

訪日客が減ることと、日本で使われるお金が減ることは、同じ意味ではありません。 直近の7~9月期には、1人当たりの旅行支出が前年同期より6.1%増えています。

中国からの旅行者は大きく減る一方、韓国や台湾からは増えています。客数の合計だけでは分からない、旅行者の出身地や支出の変化が起きているのです。

だからといって、観光産業のどの地域・業種も好調ということではありません。「何人来たか」と「いくら使ったか」を分け、その内訳を見ることが今回のニュースを理解する鍵になります。


訪日客と観光消費額、気になる疑問から読み解く

Q. 2026年1~9月に日本に来た外国人は何人?

日本政府観光局の推計で3,073万200人です。前年同期より2.9%減りました。

Q. 訪日外国人の旅行消費額はいくらだった?

同じ期間の速報値で7兆574億円です。前年同期比1.9%増で過去最高を更新しました。

Q. 1人当たりの旅行支出は増えている?

2026年7~9月期は約23万4,000円で、前年同期より6.1%増えました。これは四半期の数値であり、1~9月累計ではありません。

Q. 中国人旅行者の減少率が44.5%と55.5%の2種類あるのはなぜ?

比べる期間が違うからです。44.5%減は2026年9月の前年同月比、55.5%減は2026年1~9月の前年同期比です。

Q. 2026年9月に訪日客が最も多かった国・地域は?

韓国で84万2,300人でした。次いで台湾の59万5,600人、中国の43万800人です。

Q. 旅行消費額の中心は買い物なの?

いいえ。2026年7~9月期は宿泊費が35.2%で最も多く、買物代27.7%、飲食費22.9%の順でした。

Q. 訪日客が減ったら、ホテルの宿泊者数も同じ割合で減る?

同じ割合になるとは限りません。訪日客数は人数、延べ宿泊者数は宿泊した泊数を積み上げた指標だからです。

Q. 消費額が過去最高なら、日本の観光業はすべて好調?

そうとは言えません。全国の支出総額と、地域・個別事業者の売上や利益は異なります。どの国・地域から来て、どこで何に使うかまで見る必要があります。

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂 これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

訪日客数・国や地域ごとの動向

日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数(2026年9月推計値)」

時事通信「9月訪日客、5.0%減」

Reuters「訪日外国人、9月は5.0%減」

観光庁「宿泊旅行統計調査」

旅行消費額・1人当たりの支出

観光庁「インバウンド消費動向調査2026年7~9月期(1次速報)」

観光庁「インバウンド消費動向調査」

トラベルボイス「インバウンド消費額、2026年7~9月は3.2%増」

1~9月累計・日中関係の背景

共同通信「1~9月の訪日客数、前年割れ」


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