血管炎治療薬「タブネオス」はなぜ使用見直しに?服用中の患者はどうすればいい?

「今飲んでいる薬が、使わないほうがいいと言われたら?」

治療を続けている人にとって、これほど不安なニュースはないかもしれません。

難病の血管炎に使われる治療薬「タブネオス」をめぐり、厚生労働省が医療機関に対して、新たな患者への投与を控えるよう求めました。すでに服用している患者についても、投与中止や別の治療への切り替えを検討するよう要請しています。

背景にあるのは、重い肝機能障害による死亡報告と、薬の有効性を裏付ける臨床試験データへの疑義です。

ただし、ここで混同してはいけないことがあります。

国が治療の見直しを求めたことと、患者自身が今すぐ薬をやめるべきかどうかは、同じ話ではありません。

では、何が問題になり、服用中の人はどう対応すればよいのでしょうか。

血管炎治療薬タブネオスの使用見直しと、服用中の患者が医師に相談する必要性を示した医療ニュースのイラスト

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。

タブネオスに何が起きた?厚労省と学会の対応

厚生労働省は、新規患者への投与開始を控え、服用中の患者についても原則として中止や代替治療への切り替えを検討するよう求めています。

2026年10月21日、厚労省は薬事審議会医薬品第二部会での検討を踏まえ、医療機関などに通知を出しました。

翌22日には、日本リウマチ学会がこの通知を紹介するとともに、日本腎臓学会との合同タスクフォースが作成した「計画的中止時の対応」に関する資料を公開しました。

今回の対応は、薬の安全性だけでなく、承認時の有効性を裏付けるデータの信頼性にも疑問が生じたことを受けたものです。(厚生労働省通知・学会掲載版 · 日本リウマチ学会)

厚生労働省のタブネオスに関する通知で、新規患者と服用中の患者への対応が異なることを示す比較図

現在の状況を整理すると、次のようになります。

対象・項目 2026年10月22日時点の対応
新たに使用する患者 投与開始を差し控えるよう要請
すでに服用中の患者 原則として中止または代替治療への切り替えを検討
学会の対応 医師向けに計画的中止時の対応資料を公開
日本での承認 取り消しはまだ決定していない
今後の行政判断 2026年内をめどに承認取り消しの可能性も含め検討

新たな投与を控えることと、すでに治療を受けている患者の治療を変更することでは、必要な対応が異なります。

また、「使用見直し」と「承認取り消し」も別の段階です。

日本では現時点で承認が直ちに取り消されたわけではなく、厚労省が今後の行政処分を検討している段階です。(FNNプライムオンライン)


なぜ今、タブネオスの有効性まで疑われているのか?

今回の使用見直しには、大きく分けて二つの問題があります。

一つは重篤な肝機能障害という安全性の問題。もう一つは、薬の効果を証明するために使われた臨床試験データの信頼性です。

タブネオスの使用見直しにつながった肝機能障害の安全性問題と、臨床試験データの信頼性問題を比較した図

そもそもタブネオスとは、どんな薬?

タブネオスは、一般名を「アバコパン」という、ANCA関連血管炎の治療に使われる医薬品です。

主な対象は、顕微鏡的多発血管炎(MPA)と多発血管炎性肉芽腫症(GPA)という病気です。

どちらも体の免疫の働きが異常になり、血管に炎症が起こる病気で、腎臓や肺などの重要な臓器に障害が生じる場合があります。

アバコパンは、炎症に関係する「補体C5a」という物質の受容体の働きを抑える薬です。従来の治療で使用されてきたステロイド薬の使用量を減らすことなどが期待されていました。(日本内科学会雑誌)

日本では2021年に承認され、2022年6月からキッセイ薬品工業が販売していました。

薬の効果を示す試験に、何があったのか?

新しい薬が承認されるには、実際に患者に投与した臨床試験で、どのような効果があり、どのような危険があるかを確かめる必要があります。

ところがタブネオスでは、承認の根拠となった国際共同臨床試験について、データの信頼性に疑義が生じました。

厚労省はキッセイ薬品工業に報告を求め、その回答内容について医薬品医療機器総合機構(PMDA)などが確認しました。

その結果、承認申請時に提出された資料の信頼性に問題があり得るとされ、薬による利益がリスクを上回ると判断することは難しいという評価になりました。(厚生労働省通知・学会掲載版)

ここで注意したいのは、臨床試験データの信頼性に問題があることと、薬に効果がまったくないと証明されたことは同じではないという点です。

今回問題になっているのは、これまで示されていた有効性の根拠を、承認を維持するうえで十分に信頼できるのかということです。


服用後に23人死亡という報告は、薬が原因だと確定したのか?

23人全員の死亡原因がタブネオスだと確定したわけではありません。

2026年10月21日までの報道では、国内でタブネオスの使用後に重篤な肝機能障害が報告され、死亡した患者は計23人とされています。

そのうち6人については、薬との因果関係を否定できないとされています。(時事通信 · FNNプライムオンライン)

タブネオス使用後の肝機能障害による死亡報告23人と、薬との因果関係を否定できない6人を区別するインフォグラフィック

医薬品の安全性を調べるとき、服用後に起きた健康被害と、その薬が原因で起きた健康被害は区別されます。

例えば、重い病気の患者が治療中に体調を崩した場合、薬の副作用だけでなく、もともとの病気や別の治療、感染症などが関係している可能性もあります。

そのため、薬との因果関係を否定できないという評価は、「その薬が原因だと断定した」という意味ではありません。

とはいえ、重篤な肝機能障害や死亡例が報告されていることは、軽く考えてよい問題ではありません。

どんな副作用が注意されていた?

厚労省は2026年5月21日、タブネオスについて安全性速報、いわゆる「ブルーレター」による注意喚起を行うよう指示しました。

問題になったのは、胆管消失症候群を含む重い肝機能障害です。

当時の注意喚起では、肝機能障害の多くが投与開始後3か月以内に生じていることなどを踏まえ、定期的な肝機能検査の重要性が強調されていました。(厚生労働省)

肝機能障害では、強いだるさ、食欲低下、皮膚や白目が黄色くなる黄疸などの症状が現れることがあります。

ただし、自覚症状がはっきりしない場合もあるため、血液検査による確認も重要になります。

服用中にこうした症状や普段と違う体調の変化があった場合は、次の定期診察を待たずに医療機関へ連絡し、必要な診察を受けることが大切です。


いまタブネオスを飲んでいる人は、どう対応すればいい?

服用中の人は自己判断で中止・継続を決めず、できるだけ早く処方医に連絡して、今後の治療方針を確認してください。

厚労省は医療機関に対して治療の見直しを求めていますが、個々の患者がどのような方法で薬を中止・変更するかは、病状やほかの治療薬などを踏まえた判断が必要です。

タブネオス服用中の患者が処方医に相談し、病状評価と代替治療の検討を経て治療方針を決める流れを示す図

なぜ勝手にやめてはいけないのか?

タブネオスが使用される血管炎は、治療を適切に管理しなければ腎臓や肺などに重大な影響が出ることもある病気です。

薬の安全性への懸念がある一方で、治療を変更する際には、血管炎の活動性や再燃の可能性、ほかに使っている薬なども確認しなければなりません。

そのため、患者がニュースだけを見て服用を突然やめたり、逆に問題がないと判断して従来どおりの治療を続けると決めたりするのは適切ではありません。

厚労省も過去の患者向け注意喚起で、自己判断で中止せず医師・薬剤師に相談するよう案内しています。(厚生労働省)

主治医には何を確認すればいい?

診察や連絡の際には、現在の治療状況に合わせて次の点を確認するとよいでしょう。

  • 自分の病状では、タブネオスをいつ、どのように見直す必要があるのか
  • 代わりに使用する治療薬や、ほかの薬の調整が必要か
  • 肝機能検査などをいつ受けるべきか
  • 病気の再燃を疑う症状として、何に注意すべきか
  • 体調が変化した場合、どこへ連絡すればよいか

この確認事項は一般的な相談の目安であり、服用中止の方法を示したものではありません。

なお、日本リウマチ学会と日本腎臓学会の合同タスクフォースは10月22日、計画的な中止時の対応について専門家向け資料を公開しています。

医療機関が患者ごとの治療計画を考える際に参照するための資料であり、患者が自分で中止方法を決めるための手順書ではありません。(日本リウマチ学会・計画的中止時の対応)


タブネオスをやめたら、血管炎の治療はできなくなる?

タブネオスの使用が見直されても、血管炎の治療方法がすべてなくなるわけではありません。

顕微鏡的多発血管炎や多発血管炎性肉芽腫症では、以前からステロイド薬や免疫抑制薬などを組み合わせた治療が行われてきました。

ANCA関連血管炎に対する従来の免疫抑制治療と、タブネオスを使用する治療の位置付けを示す概念図

日本内科学会雑誌に掲載されたANCA関連血管炎の解説では、顕微鏡的多発血管炎や多発血管炎性肉芽腫症の治療に、リツキシマブやシクロホスファミド、グルココルチコイド(ステロイド薬)などが用いられることが紹介されています。(日本内科学会雑誌)

ただし、どの薬を使うかは病気の重症度、障害されている臓器、これまでの治療経過、副作用の危険性などによって異なります。

「別の薬に替える」だけでは済まない理由

タブネオスには、炎症に関わる特定の仕組みを抑え、ステロイド薬の使用量を減らすことなどが期待されていました。

そのため、タブネオスの使用を見直す場合、単純に薬の名前を一つ変えるだけではなく、治療全体の組み合わせを再検討する必要が生じることがあります。

代替治療が存在することは患者にとって重要な情報ですが、それがすべての人に同じように適用できるという意味ではありません。


なぜ海外でもタブネオスの承認が問題になったのか?

タブネオスをめぐる懸念は、日本だけの問題ではありません。

薬の承認の根拠となった臨床試験について、欧米の規制当局でも疑義が示され、対応が進められています。

タブネオスに対する日本・EU・米国の規制対応を、2026年10月時点で比較したインフォグラフィック

2026年10月22日までに確認できる主な状況は、次のとおりです。

国・地域 対応状況
EU 2026年8月に承認取り消し
米国 規制当局が承認撤回を提案
日本 新規投与の差し控えと既存患者の治療見直しを要請。承認取り消しを含め検討中

(キッセイ薬品工業・欧州での承認取り消しに関する公表 · 時事通信)

ここで重要なのは、各国で同じ薬が問題になっていても、規制上の判断が必ずしも同じ段階にあるわけではないことです。

EUでは承認取り消しが実施された一方、日本では国内の承認を取り消すかどうかの最終判断が残されています。

また、米国でも承認撤回が提案された段階と、実際に承認が取り消された段階は区別する必要があります。


日本で今後、タブネオスの承認が取り消される可能性は?

厚労省は2026年内をめどに、承認取り消しの可能性を含めて行政上の対応を判断する方針です。

ただし、10月23日時点で承認取り消しが決まったわけではありません。(FNNプライムオンライン · 時事通信)

今後の焦点は、臨床試験データの問題に対する評価と、薬を使う利益が副作用などのリスクを上回ると判断できるかどうかです。

すでに治療を受けている患者への対応も重要になります。治療薬を変更する場合には、病気の再燃を防ぐことと、副作用を避けることの両方を考えなければなりません。

国の最終判断を待つ間も、患者が安全に治療を続けられるよう、医療機関で適切な対応が進められることが必要です。


【結論】このニュースは、こう理解すればいい

今回のタブネオス問題は、単に副作用が報告されたという話ではありません。

重篤な肝機能障害に関する安全性への懸念に加え、薬の有効性を証明する臨床試験データの信頼性にも疑問が生じたため、治療上の利益とリスクを改めて評価する必要が出てきたということです。

厚労省は新規患者への投与開始を控えるよう求め、服用中の患者についても、原則として中止や別の治療への切り替えを検討するよう医療機関に要請しています。

しかし、患者自身がニュースを見て一律に服薬を中止してよいという意味ではありません。

現在服用している人にとって大切なのは、早めに主治医へ連絡し、病状と安全性を踏まえた治療方針を確認することです。

そして、日本での承認取り消しはまだ決定していません。

「国が治療の見直しを求めた」「患者は医師と対応を決める」「承認取り消しは今後の判断」という三つを分けて理解することが、今回のニュースを正確に受け止めるために重要です。


タブネオス、気になる疑問から読み解く

Q. タブネオスは何の病気に使われる薬ですか?

顕微鏡的多発血管炎や多発血管炎性肉芽腫症などのANCA関連血管炎に使われる薬です。炎症に関係する補体C5a受容体の働きを抑えます。

Q. タブネオスはすでに販売禁止になったのですか?

日本で承認取り消しが確定したわけではありません。2026年10月23日時点では、新規投与の差し控えや服用中の患者の治療見直しが求められています。

Q. いま飲んでいるタブネオスは、すぐにやめるべきですか?

自己判断で服用を中止せず、できるだけ早く処方医に相談してください。中止の方法や代替治療の必要性は、病状に応じて医師と確認する必要があります。

Q. タブネオスで23人が死亡したというのは本当ですか?

国内で服用後に重篤な肝機能障害を発症し、死亡した患者23人が報告されています。ただし、23人全員について薬が死因と確定したわけではなく、そのうち6人は薬との因果関係を否定できないとされています。

Q. タブネオスで注意すべき副作用は何ですか?

重篤な肝機能障害に注意が必要です。強いだるさや食欲低下、黄疸など、普段と異なる症状が出た場合には速やかに医療機関に相談してください。

Q. 血管炎の治療に使える別の薬はありますか?

ステロイド薬やリツキシマブ、シクロホスファミドなど、従来から使われている治療薬があります。ただし、個々の患者にどの治療が適しているかは、病状を踏まえて医師が判断します。

Q. 日本リウマチ学会は何を発表しましたか?

2026年10月22日に厚労省の通知を紹介し、日本腎臓学会との合同タスクフォースによる、タブネオスの計画的中止時の対応資料を公開しました。

Q. タブネオスの承認取り消しはいつ決まりますか?

厚労省は2026年内をめどに判断する方針を示しています。ただし、具体的な決定日や最終的な処分内容は、10月23日時点で確定していません。

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂
これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

厚生労働省・専門学会の公式対応

厚生労働省「アバコパン製剤の使用に当たっての留意事項について」(2026年10月21日・学会掲載版)

PMDA「安全対策に関する通知等(医薬品)」

日本リウマチ学会「厚生労働省からのアバコパン製剤の使用に当たっての留意事項のお知らせ」(2026年10月22日)

日本リウマチ学会・日本腎臓学会合同タスクフォース「アバコパンの計画的中止時の対応について」

安全性情報・患者への注意喚起

厚生労働省「タブネオスカプセル10mg」投与患者における重篤な肝機能障害に関する注意喚起(2026年5月21日)

厚生労働科学研究班「アバコパン(タブネオス)に関する重要なお知らせ」(2026年5月18日)

死亡報告・承認の現状

時事通信「血管炎薬、『申請資料に問題』―『タブネオス』死亡23人に」(2026年10月21日)

FNNプライムオンライン「血管炎治療薬『タブネオス』の投与見合わせ要請」(2026年10月22日)

病気と治療の医学的背景

日本内科学会雑誌「ANCA関連血管炎診断と治療の進歩」

キッセイ薬品工業「欧州におけるタブネオスの販売承認の取り消しについて」(2026年8月6日)

あわせて読みたい