国民年金保険料が子ども1歳まで免除に?父親も対象、払わなくても将来の年金が減らない理由
「国民年金の保険料が、子どもが1歳になるまで免除される?」
そう聞くと、まず気になるのはその後です。
「払わなかった分だけ、将来もらえる年金が減るのでは?」
しかも今回の制度は母親だけではありません。条件を満たせば父親も対象で、所得要件もありません。
2026年10月1日から始まったのが、国民年金第1号被保険者を対象とする「育児期間免除制度」です。自営業者やフリーランスなど、これまで会社員の育児休業とは違う仕組みの中にいた人たちへの新しい子育て支援です。(日本年金機構 · 厚生労働省)

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。
では、誰が対象になり、なぜ保険料を払わなくても将来の年金が減らないのでしょうか。
誰でも「子どもが1歳未満」なら免除されるの?

いいえ。今回の育児免除の対象は、国民年金の「第1号被保険者」です。
主に自営業者やフリーランス、農業者、学生、無職の人などが該当します。20歳以上60歳未満で第1号被保険者となっている人が、1歳未満の子と同じ住所で生活し、法律上の親子関係などの要件を満たしていることが基本条件です。(日本年金機構)
| 区分 | 主な人 | 今回の育児免除 |
|---|---|---|
| 第1号被保険者 | 自営業、フリーランス、農業者、学生、無職など | 対象 |
| 第2号被保険者 | 会社員、公務員など | この制度は対象外 |
| 第3号被保険者 | 第2号被保険者に扶養される配偶者 | この制度は対象外 |
そして大きな特徴が二つあります。
所得要件がありません。さらに「仕事を休んでいること」という休業要件もありません。
自営業やフリーランスの場合、「育児休業を取ったのか」を会社員のように判定しにくい働き方もあります。国民年金第1号被保険者の多様な実態を踏まえ、所得要件や休業要件を設けない仕組みとされています。(厚生労働省)
なぜ保険料を払わないのに、将来の年金は減らないの?

ここが今回、最も誤解しやすいところです。
国民年金には以前から、所得が少ない場合などに保険料を免除する制度があります。ただし通常の「全額免除」は、2009年4月以降の期間なら、老齢基礎年金額には全額納付した場合の2分の1が反映される仕組みです。手続きをせず未納になった期間は、老齢基礎年金額には反映されません。(日本年金機構)
ところが育児免除は扱いが違います。
| 状態 | その月の保険料 | 老齢基礎年金額への扱い |
|---|---|---|
| 通常どおり納付 | 払う | 納付済みとして反映 |
| 育児免除 | 払わない | 納付済みとして反映 |
| 一般の全額免除 | 払わない | 原則、全額納付時の2分の1を反映 |
| 未納 | 払わない | 反映されない |
育児免除の対象期間は、保険料を納付した期間として扱われます。
そのため、「今は払わなくてよいが、老後の年金をその分だけ削る」という制度ではありません。厚生労働省も、対象期間は保険料を納めた期間とみなされ、満額の基礎年金が保障される仕組みだと説明しています。(厚生労働省 · 日本年金機構)
父親も本当に対象?夫婦そろって免除されることもある?

はい。父親も対象です。
さらに夫婦とも国民年金第1号被保険者で、それぞれ要件を満たしていれば、同じ子について父母とも育児免除を受けることができます。(日本年金機構)
たとえば夫婦で店を経営していて、二人とも第1号被保険者として国民年金保険料を払っているケースです。
「一家で1人だけ」ではなく、父と母それぞれについて制度が適用される可能性があります。
令和8年度の国民年金保険料は1人あたり月17,920円です。育児期の家計にとって、毎月の固定費が免除される意味は小さくありません。(日本年金機構)
産前産後免除がある実母は9か月、父親は最大12か月?なぜ期間が違うの?

産前産後免除を受ける実母の育児免除は9か月、実父や養父母などは最大12か月です。数字だけ見ると、「なぜ期間が違うの?」と感じるかもしれません。
ただし、実母には以前から「産前産後期間の国民年金保険料免除制度」があります。
単胎妊娠の場合、原則として出産予定日または出産日の前月から4か月間が産前産後免除の対象です。新しい育児免除は、その産前産後免除期間に引き続く9か月間が対象になります。(日本年金機構・産前産後免除 · 日本年金機構・育児免除)
一方、実父や養父母などは、原則として子を養育することになった月から1歳の誕生日の前月まで、最大12か月が対象です。
つまり「母親だけ9か月しか支援されない」のではなく、実母については既存の産前産後免除と新しい育児免除をつなげて考える必要があります。
会社員はなぜ今回の制度の対象外なの?

会社員や公務員に子育て中の保険料免除がないから、今回の制度から外されたわけではありません。
厚生年金に入っている第2号被保険者には、育児休業などを取得している期間について健康保険料や厚生年金保険料を免除する別の仕組みがあります。(厚生労働省)
これまで差が大きかったのが、自営業者やフリーランスです。
会社員のような「育児休業」という枠組み自体がない人も多く、育児で仕事を減らして収入が落ちても、国民年金保険料は原則として自分で払い続ける必要がありました。
2022年の全世代型社会保障構築会議報告書では、育児休業給付の対象外となる自営業者やフリーランス、ギグワーカーなどへの育児期間中の支援を検討する必要性が示され、その後の制度化につながりました。(厚生労働省・制度創設の経緯)
10月より前に生まれた子も対象になる?

対象になる場合があります。
重要なのは、2026年10月1日以降に、子どもが1歳になるまでの対象期間が残っているかどうかです。
たとえば日本年金機構は、2026年1月1日に生まれた子を育てている場合、制度開始後の2026年10月から12月までの3か月間が育児免除になる例を示しています。制度開始前の1月から9月まで遡って免除されるわけではありません。(日本年金機構)
すでに対象期間の保険料を納めている場合でも、届出によって育児免除として扱われれば、納付済みの保険料は他の期間への充当または還付の対象になります。(日本年金機構)
手続きは自動?自分で届け出る必要がある?

原則として、要件を満たした後に届出が必要です。
紙の場合は住民登録している市区町村の国民年金担当窓口に提出でき、郵送も可能です。マイナポータルから電子申請する方法もあります。(日本年金機構)
ただし例外があります。
産前産後免除を受けていた実母で、その免除期間が2026年9月以降に終了し、基礎年金番号とマイナンバーが紐づいているなど、日本年金機構が情報連携によって親子関係と同一世帯を確認できる場合は、改めて届出をしなくても育児免除へ移行できます。該当者には日本年金機構から「国民年金保険料育児免除該当通知書」が送られます。(日本年金機構)
一方、実父や養父母、産前産後免除の届出が済んでいない実母などは手続きが必要です。
この制度のお金は、どこから出るの?
育児免除だからといって、免除された保険料分が年金制度から単純に消えてしまうわけではありません。
厚生労働省は、この制度の財源に子ども・子育て支援金を充てると説明しています。(厚生労働省)
そのうえで、育児免除の対象期間は保険料納付済期間として扱われます。
今回の育児免除は、単なる「支払い猶予」ではありません。
子育て中の保険料負担を今減らしながら、老後の基礎年金は減らさない。
この二つを同時に実現する仕組みです。
【結論】このニュースは、こう理解すればいい
2026年10月から始まった国民年金の育児免除は、主に自営業者やフリーランスなどの第1号被保険者が、1歳未満の子を育てている期間の国民年金保険料を免除される制度です。
母親だけではなく父親も対象で、父母とも第1号被保険者なら、それぞれが対象になる可能性があります。所得要件や休業要件もありません。
そして最も大切なのは、「免除されたから将来の年金がその分減る」という制度ではないことです。
育児免除期間は保険料を納付した期間として扱われ、老齢基礎年金額に反映されます。
一方で、すべての親が対象になるわけではありません。第1号被保険者かどうか、子どもの年齢、親子関係、同一住所などの要件を確認し、必要な場合は届出をすることが重要です。
国民年金の育児免除、気になる疑問から読み解く
Q. 国民年金の育児免除はいつから始まりましたか?
2026年10月1日からです。制度開始前から子どもを養育していても、10月1日以降に1歳になるまでの対象期間が残っていれば、その期間について免除を受けられる場合があります。
Q. 父親も国民年金保険料が免除されますか?
はい。父親も国民年金第1号被保険者で、1歳未満の子と同じ住所で養育するなどの要件を満たせば対象です。
Q. 夫婦とも自営業なら、二人とも免除されますか?
二人とも第1号被保険者で、それぞれ要件を満たしていれば、父母とも対象になることがあります。一家につき1人だけの制度ではありません。
Q. 所得が高くても育児免除を利用できますか?
はい。育児免除には所得要件がありません。一般的な国民年金保険料の所得による免除制度とは、この点も異なります。
Q. 育児中も仕事を続けていたら対象外ですか?
仕事を続けていることだけを理由に対象外にはなりません。第1号被保険者の育児免除には休業要件が設けられていないためです。
Q. 保険料を払わないと老後の年金は減りませんか?
育児免除の対象期間は保険料納付済期間として扱われるため、その期間を理由に老齢基礎年金額が減る仕組みではありません。
Q. 会社員もこの制度を利用できますか?
厚生年金に加入している第2号被保険者は今回の国民年金育児免除の対象外です。ただし、会社員などには育児休業等期間中の厚生年金保険料・健康保険料を免除する別の制度があります。
Q. 手続きは自動で行われますか?
原則は届出が必要です。ただし、一定の条件を満たす産前産後免除後の実母については、日本年金機構が必要な情報を確認できれば届出不要となる場合があります。実父や養父母などは原則として手続きが必要です。
今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂
これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!
主な情報源
制度の対象・免除期間・手続き
日本年金機構「国民年金第1号被保険者が1歳までの子を養育しているとき」
制度の仕組み・財源
制度創設の背景
厚生労働省「国民年金第1号被保険者の育児期間に係る国民年金保険料免除制度の周知について」