北朝鮮が1日に2回ミサイル発射 2026年「9回・少なくとも15発」は何を意味する?

「また北朝鮮のミサイルか」と感じた人も多いかもしれません。

でも今回は、午後3時ごろに1回、その約3時間後の午後5時54分ごろにもう1回。日本の防衛省は、同じ9月20日に少なくとも1発ずつ、計2回の弾道ミサイル発射を確認しました。1発目は約440km、2発目は約590km飛び、いずれも日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したと推定されています。 (防衛省)

では、2発は同じミサイルだったのでしょうか。

そして「EEZの外」と聞けば、日本には直接関係のない話なのでしょうか。

さらに小泉進次郎防衛相は、2026年の北朝鮮による弾道ミサイル等の発射について「9回、少なくとも15発」と説明しました。昨年の「4回、少なくとも5発」と比べると、数字はかなり変わっています。 (防衛省)

北朝鮮東岸から日本海方向へ約3時間の間隔で2回発射された弾道ミサイルを示す解説イラスト

ここでは「また発射された」で終わらせず、今回の2回発射の違いと、「EEZ外」「9回・15発」という数字が何を意味するのかを整理します。

まず、9月20日に何が起きた?

9月20日の北朝鮮による2回の弾道ミサイル発射を時刻・高度・飛距離で比較したタイムライン

防衛省の発表では、1回目は午後3時ごろ、北朝鮮東岸付近から北東方向へ発射されました。最高高度は約60km、飛距離は約440kmで、日本のEEZ外に落下したと推定されています。 (防衛省)

2回目は午後5時54分ごろ。同じく北朝鮮東岸付近から北東方向に発射され、最高高度は約70km、飛距離は約590kmでした。こちらも日本のEEZ外に落下したとされています。航空機や船舶の被害は確認されていません。 (防衛省)

発射時刻最高高度飛距離日本側の推定
1回目15時ごろ約60km約440kmEEZ外に落下
2回目17時54分ごろ約70km約590kmEEZ外に落下

つまり、「1回の発射で2発が同時に飛んだ」という話ではありません。約3時間の間隔を置き、別々に発射が確認されたというのが今回の特徴です。


2発は同じ種類のミサイルだったの?

現時点では、日本政府は2発の具体的な型式を確定していません。

防衛省は2回とも「詳細について日米韓で分析中」としています。韓国軍は2発を短距離弾道ミサイルとみており、Reutersは1発目について「火星11」系列の可能性があると報じています。一方、2発目を含む正確な型式は引き続き分析中です。 (Reuters)

ここは「北朝鮮が火星11を2発撃った」と断定するより、

「2発とも短距離弾道ミサイルとみられている」
「1発目は火星11系列の可能性が指摘されている」
「日本政府は型式を含む詳細を分析中」

と分けて考える方が正確です。

飛距離が約440kmと約590kmで違うからといって、それだけで別の種類だったとも言えません。同じ系列でも飛行条件や設定によって飛距離が変わる可能性があり、公開情報だけで型式を決めつけることはできません。


「EEZ外に落下」なら、日本には関係ない?

日本の領海とEEZ、Jアラートが使われる条件の違いを説明する模式図

「EEZ外」は、「日本の領土・領海の外」という言葉と同じではありません。

領海は原則として海岸の基準線から12海里、約22kmまでで、沿岸国の主権が及びます。一方、EEZは原則200海里、約370kmまで広がり、日本には水産資源や海底資源の管理などに関する主権的権利が認められています。 (海上保安庁)

区分おおまかな範囲日本が持つ主な権利
領海原則12海里(約22km)主権が及ぶ
EEZ原則200海里(約370km)資源の探査・開発・管理などの主権的権利
EEZの外さらに外側「日本の海域」とは別の扱い

では、なぜ今回Jアラートが鳴らなかったのでしょうか。

内閣官房によると、Jアラートは、弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性がある場合、またはその上空を通過する可能性がある場合に使われます。EEZなど領海外の周辺海域に落下すると判断された場合は、Jアラートではなく船舶や航空機への警報が行われます。 (内閣官房)

つまり今回「Jアラートが鳴らなかった」ことと、「ミサイル発射を政府が問題視していない」ことは別です。

防衛省は今回、情報収集や航空機・船舶の安全確認を行い、北朝鮮に抗議しています。 (防衛省)


「9回・少なくとも15発」は何が増えた数字?

北朝鮮の弾道ミサイル等の発射回数と発数を2025年と2026年で比較したグラフ

小泉防衛相は9月20日の2回目の発射後、北朝鮮による弾道ミサイル等の発射は2026年に入って「9回、少なくとも15発」と説明しました。

比較対象として示した2025年は「4回、少なくとも5発」です。防衛相の説明どおりなら、発射事案の回数は前年の2倍を超え、確認された発数は少なくとも3倍になっています。 (防衛省)

発射の回数ミサイル等の発数
2025年4回少なくとも5発
2026年9月20日時点9回少なくとも15発

ここで混同しやすいのが「回」と「発」です。

防衛省の集計表現では、1回の発射事案で複数のミサイルが確認される場合があります。そのため、「9回」と「15発」は同じものを数えた数字ではありません。

今回も午後3時と午後5時54分という2つの発射時刻がありましたが、防衛省が年初からの集計をどのように1件ずつ整理しているかは、個別の発表を照合して見る必要があります。

大切なのは、「今年は15回撃った」という意味ではないことです。


では、なぜ同じ日に2回発射したの?

北朝鮮の2回のミサイル発射について確認済みの事実と未確定の発射意図を分けて示す図

この点は、まだ断定できません。

小泉防衛相自身が、北朝鮮による個々の発射の意図について「確定的に答えることは困難」と説明しています。 (防衛省)

ただし、発射前の周辺状況は確認できます。

北朝鮮の金与正氏は9月17日、米国主導の多国間軍事演習を批判し、北朝鮮の安全や利益が脅かされれば、より強い対応を取る可能性があるとの趣旨の声明を出しました。また北朝鮮は、核保有国としての立場は不可逆的だとの主張も繰り返しています。 (Reuters)

その数日後に今回の発射が行われたため、米国や韓国などへの軍事的シグナルという見方は出ています。しかし、「この演習への報復として2回撃った」「特定の首脳会談を狙って発射した」といった発射目的まで、公開情報だけで確定することはできません。

北朝鮮側は核・ミサイル開発を安全保障上の自衛措置だと主張してきました。一方、国連安全保障理事会は北朝鮮による弾道ミサイル技術を使った発射を過去の決議で禁じており、日本政府も今回の発射を関連する安保理決議に違反するものとして非難しています。 (国連安全保障理事会)


今後は何を見ればいい?

まず確認したいのは、2発の具体的な型式について日米韓の分析結果が追加で公表されるかどうかです。

特に1発目が「火星11」系列だったのか、2発目も同じ系列だったのかは、今回の発射の性格を理解するうえで確認したい点です。韓国軍は2発を短距離弾道ミサイルとみていますが、正確な型式は分析中です。 (Reuters · 聯合ニュース)

もう一つは発射頻度です。

「9回・少なくとも15発」という数字そのものより、今後も短い間隔で発射事案が続くのか、長距離型や別の兵器体系へ広がるのかを見る方が、北朝鮮の軍事動向を理解しやすくなります。

そして日本にとっては、「EEZ内か外か」だけで判断しないことも大切です。日本への飛来可能性があればJアラート、周辺海域への落下なら航空機・船舶への情報提供というように、政府の対応も予測された飛行経路によって変わります。 (内閣官房)


ニュースほどきの一言まとめ

9月20日の北朝鮮ミサイル発射は、約3時間の間隔を置いた2回の発射でした。どちらも日本のEEZ外に落下したと推定されていますが、それは「日本と無関係」という意味ではありません。

2026年の「9回・少なくとも15発」は、2025年の4回・少なくとも5発をすでに大きく上回っています。一方、2発の正確な型式や、なぜ同じ日に2回発射したのかという意図については、まだ分析中の部分が残っています。

「確認されたこと」と「推測されていること」を分けて見ると、今回のニュースはずっと分かりやすくなります。


北朝鮮ミサイル、気になる疑問から読み解く

Q. 北朝鮮は9月20日に何発のミサイルを発射したの?

日本の防衛省は、午後3時ごろと午後5時54分ごろの2回、それぞれ少なくとも1発の弾道ミサイル発射を確認しています。今回確認されたのは少なくとも計2発です。 (防衛省)

Q. 2発とも日本のEEZに落ちたの?

いいえ。防衛省は2発とも日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したと推定しています。

Q. EEZ外なら日本には危険がないの?

「EEZ外=必ず安全」と単純には言えません。EEZは領海とは異なる海域区分で、日本政府は飛行経路や日本への飛来可能性を分析しながら警戒や情報提供を行います。

Q. なぜ今回はJアラートが鳴らなかったの?

Jアラートは、ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性、またはその上空を通過する可能性がある場合に使われます。今回のようにその可能性がないと判断された場合は、原則として使用されません。 (内閣官房)

Q. 2発は「火星11」だったの?

確定していません。韓国軍は2発を短距離弾道ミサイルとみており、Reutersは1発目について火星11系列の可能性があると報じています。日本政府は具体的な型式を含め詳細を分析中です。 (Reuters)

Q. 「2026年9回・少なくとも15発」とはどういう意味?

防衛省が示した2026年の弾道ミサイル等の発射状況です。「9回」は発射事案の回数、「少なくとも15発」は確認されたミサイル等の本数として区別して見る必要があります。 (防衛省)

Q. 2025年と比べると増えているの?

はい。小泉防衛相によると、2025年は4回・少なくとも5発でした。2026年9月20日時点では9回・少なくとも15発となっています。 (防衛省)

Q. なぜ同じ日に2回発射したの?

現時点では確定していません。発射前には北朝鮮が米国主導の軍事演習を批判していましたが、防衛相も個々の発射意図を断定することは困難だとしています。 (防衛省)

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂
これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

9月20日の発射・日本政府の対応

防衛省「北朝鮮のミサイル等関連情報」15時発射分

防衛省「北朝鮮のミサイル等関連情報(2発目)」

防衛省「防衛大臣臨時記者会見」9月20日19時20分

ミサイルの種類・周辺情勢

Reuters「北朝鮮が東岸沖へ2発の弾道ミサイルを発射」

Yonhap「North Korea fires 2 short-range ballistic missiles hours apart」

EEZ・Jアラートの仕組み

海上保安庁「排他的経済水域(EEZ)と領海及び公海の違い」

内閣官房 国民保護ポータルサイト「Jアラートによる情報伝達に関するQ&A」

国連安保理決議と北朝鮮の弾道ミサイル

国連安全保障理事会「1718制裁委員会」

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