防災メールが止まったら避難情報はどう届く?全国の自治体に広がった不正アクセス

もし、いつも届いている自治体の防災メールが急に来なくなったら。大雨や地震のとき、避難の知らせを見逃してしまうのではないかと心配になりますよね。

全国の自治体で使われている情報配信システムが不正アクセスを受け、一部の地域で防災メールなどが停止しています。ただし、全国の防災情報が一斉に止まったわけではありません。 住んでいる自治体によって、影響を受けたサービスも、代わりに使える連絡手段も異なります。

防災メールの一部停止と避難情報を確認できる別の手段を示すイラスト

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。

知っておきたいのは、「何が止まったのか」と「メールが届かない間、どこを見ればよいのか」の二つです。今回の出来事を時系列で追うと、その違いが見えてきます。

防災メールのシステムで何が起きた?

10月11日の不審な動きの検知から14日の影響拡大までを示す時系列図

被害を公表したのは、大阪府箕面市に本社を置くアルカディアです。同社が提供する「SpeeCAN RAIDEN(スピーキャン・ライデン)」は、自治体などが防災・防犯情報をメールや電話などで一斉に知らせるための仕組みです。

同社が不正アクセスを疑う動きを確認したのは10月11日16時30分。12日午前3時ごろに侵入経路をふさぐ応急措置を取り、13日には影響のある一部サービスを緊急停止しました。11日が「不正な動きを見つけた日」であって、侵入が始まった時刻まで確定したわけではありません。(アルカディア公式発表)

14日には各地の自治体が新たな影響を公表。共同通信によると、総務省は同日17時時点で、110自治体から情報漏えいの恐れや防災メールの配信停止などに関する報告を受けたと明らかにしました。これは「110自治体の防災メールがすべて停止した」という意味ではありません。(共同通信)


なぜ一つの会社への不正アクセスが全国に広がったの?

複数の自治体が同じ民間の情報配信システムを利用する仕組みを示した図

複数の自治体が、同じ民間事業者の情報配信サービスを利用していたからです。今回の発表で問題になっているのは、各市役所のシステムが全国一斉に侵入されたという話ではありません。

自治体は住民向けの防災メールに加え、職員の緊急呼び出し、学校からの連絡、電話・FAXによる通知など、さまざまな配信業務を外部の専門会社に委託しています。自治体のサービス名が異なっていても、その裏側では同じ事業者の仕組みが使われていることがあります。

共通の配信基盤に問題が起きると、離れた地域にも影響が及び得ます。一方で、同じ会社のサービスでも、利用している環境や配信方法によって影響は同じではありません。(アルカディア公式発表 · 広島市)

この仕組みは、ふだんは情報をまとめて効率よく届けられる反面、委託先で障害が起きたときに複数の自治体が影響を受けるという課題も持っています。


「最大313万6,000件」は、もう流出した人数なの?

漏えいした可能性のあるメールアドレスなどの最大推計件数を比較する図

313万6,000件は、流出が確認された人数ではありません。 アルカディアが10月13日に公表した、漏えいした可能性のあるメールアドレスの最大推計件数です。

情報の種類 漏えいの可能性がある最大推計件数
メールアドレス 約313万6,000件
電話番号 約10万5,000件
FAX番号 約1万5,000件

同社は、氏名などの連絡先情報、担当者・契約に関する情報、保存された配信履歴の本文なども対象になり得ると説明しています。調査は続いており、実際に外部へ持ち出された件数や被害人数が、この数字で確定したわけではありません。 また、メール・電話・FAXの件数を単純に足して被害人数にすることもできません。(アルカディア公式発表)

「クレジットカード番号も流出したのでは」と心配する人もいるでしょう。同社は、SpeeCAN RAIDENではクレジットカードなどの決済情報を扱っておらず、今回の漏えい対象ではないと説明しています。ただし、登録情報の内容はサービスごとに異なるため、自分が使っている自治体の発表を確認する必要があります。


防災メールはどの自治体でも止まっているの?

いいえ。配信を停止した自治体もあれば、通常通り使えると発表した自治体もあります。 同じ事業者を利用していても、住民向けメールと職員向けの連絡では影響が異なる場合があります。

10月14日までに公表された例を比べると、違いが分かります。

自治体 公表された主な状況 住民向けの案内
美濃市(岐阜県) 防災・あんしんメールを停止 市の防災アプリ・公式LINEなどで緊急情報を配信
箕面市(大阪府) 市民安全メールと「ハザードン」による市からのお知らせ配信を停止 市の最新の案内で別の手段を確認
長野市(長野県) 防災メールの配信を継続 不審なメールへの警戒を呼びかけ
広島市(広島県) 市民向け防災情報メールへの影響は確認されず、職員参集システムの登録情報には漏えいの可能性 職員向けと住民向けを分けて説明

(美濃市 · 箕面市 · 長野市 · 広島市)

特に注意したいのは、「防災アプリなら必ず使える」とは限らないことです。美濃市は防災アプリを代替手段に挙げていますが、箕面市ではアプリを通じた市からのお知らせにも影響が出ています。普段利用するサービスを、自治体の公式発表で確かめてください。


防災メールが届かないと、緊急速報メールも来なくなる?

登録制の防災メールと携帯電話の緊急速報メールの仕組みの違いを示す図

登録制の防災メールと、携帯電話の「緊急速報メール」は別の仕組みです。 今回、一部の登録制メールが止まったことだけをもって、緊急地震速報や津波警報などの配信まで全国で停止したとはいえません。

登録制の防災メールは、住民がメールアドレスなどを登録し、自治体から知らせを受け取るサービス。一方、携帯電話会社が提供する緊急速報メールは、対象地域にいる対応端末へ、緊急地震速報や避難情報などを一斉に知らせる仕組みです。受信するには端末の対応状況や設定、電波状況などの条件もあります。(気象庁)

ただし、自治体がどの配信経路を利用しているかは地域ごとに異なります。「自分の地域の避難情報は必ず緊急速報メールで受け取れる」と思い込まず、次の複数の手段を組み合わせることが大切です。

確認先 主に確認できること
お住まいの自治体の公式サイト・公式SNS 避難情報、避難所、地域ごとの配信停止・代替手段
自治体が利用を案内している公式アプリ・LINE その自治体が実際に運用できているお知らせ
防災行政無線・地域のテレビやラジオ 周辺地域の防災情報や自治体の呼びかけ
気象庁の防災情報・キキクル 気象警報、雨や土砂災害、河川の危険度など

気象庁の「キキクル」は大雨などによる危険度を地図で確認できる情報で、自治体が発令する避難情報そのものとは役割が異なります。自治体の発表と合わせて利用してください。(気象庁・防災情報 · 総務省消防庁)


登録者に不審なメールが届いたら、どうすればいい?

自治体を装った不審なメールを開かず公式サイトで確認する手順を示す図

メール内のURLや添付ファイルを開かず、自治体の公式サイトを自分で開いて確認してください。 防災情報に見せかけて個人情報を入力させる連絡には、特に注意が必要です。

実際に横須賀市は10月13日、防災情報メールなどの登録者から不審なメールが届いたという問い合わせを受け、サービス提供事業者に確認したと公表しています。ただし、受信した不審メールのすべてが今回の不正アクセスに直接起因すると断定できるわけではありません。(横須賀市)

連絡先だけでも、自治体の利用者を狙った詐欺の手がかりになり得ます。アルカディアと各自治体は、メールやメッセージから氏名、住所、パスワード、口座情報などを入力しないよう呼びかけています。身に覚えのない送信元から届いたメールでは、添付ファイルを開かず、記載されたリンクにも進まないでください。(アルカディア公式発表)

メールアドレスが漏えいした可能性と、メールのパスワードが漏えいしたことは同じではありません。一方、不審なサイトにパスワードを入力してしまった場合は、そのサービスの公式画面から速やかに変更し、必要に応じて事業者へ相談しましょう。


消防の「NET119」や「119RAIDEN」にも影響があるの?

14日には、防災メールとは別の二つの消防関連サービスでも、不正アクセスの形跡が確認されました。 アルカディアは「NET119」と「119RAIDEN」の登録情報についても、漏えいの可能性があると発表しています。

サービス 何のための仕組みか 会社が示した漏えいの可能性
NET119 聴覚・言語機能に障害がある人などがインターネット経由で119番通報するための仕組み 登録情報など最大約1万3,000件
119RAIDEN 消防職員・消防団などへの一斉連絡に使う仕組み メールアドレス約9万7,000件など

両サービスについて同社は14日の更新で、現時点ではサービス停止を検討しておらず、通常通り利用できると説明しました。また、同日17時12分の更新では、NET119の映像通報については漏えいの可能性がないとしています。「119」という名前が付いているからといって、一般の119番電話が停止したという発表ではありません。 また、これらの件数を先ほどの防災メールの最大推計件数に単純に加えて「被害人数」とすることもできません。(アルカディア公式発表 · 甲府地区消防本部)


いつ復旧する?これから何を確認すればいい?

停止中のサービスが一斉に再開する日時は、現時点では示されていません。 一部の自治体は、引き続き復旧時期を「未定」と案内しています。事業者が侵入経路をふさぐ応急措置を取ったことと、サービスの安全性を確認して再開することは別の段階です。(箕面市 · 五條市)

今後は、アルカディアの調査で実際の漏えいの有無や対象範囲がどこまで分かるのか、各自治体がいつどの配信機能を再開するのかが焦点になります。総務省消防庁も14日、自治体に対して災害情報を住民へ伝える別の手段を確保するよう要請しました。(時事通信)

今できることは難しくありません。お住まいの自治体の公式サイトで「防災メール」「不正アクセス」「配信停止」を確認し、実際に使える情報源をもう一つ確保しておくことです。メールが来ないことを「危険がない」という意味に受け取らないようにしましょう。


【結論】このニュースは、こう理解すればいい

今回の問題は、防災情報を自治体に代わって届ける民間の配信システムが不正アクセスを受け、一部の自治体でサービス停止と個人情報漏えいの可能性が同時に生じたというものです。

メールアドレス最大約313万6,000件という数字は、現時点では漏えいの可能性がある最大推計であり、流出確定人数ではありません。自治体ごとに停止状況も異なり、登録制メールと携帯電話の緊急速報メールも同じ仕組みではありません。

住民にとって大切なのは、復旧を待つ間も、自治体の公式サイトや防災行政無線、気象庁の防災情報など、複数の経路から必要な情報を確認できるようにすることです。


防災メール不正アクセス、気になる疑問から読み解く

Q. 防災メールは日本全国で停止していますか?

いいえ。停止した自治体がある一方で、通常通り配信している自治体もあります。自分の自治体の公式発表が判断の基準です。

Q. 「313万6,000件」は情報が流出した人数ですか?

違います。アルカディアが示した、漏えいした可能性のあるメールアドレスの最大推計件数です。実際の流出件数や人数は確定していません。

Q. 防災メールと緊急速報メールは同じですか?

違います。前者は主に自治体の登録制配信、後者は携帯電話会社が対応端末へ地域単位で届ける仕組みです。受信条件や自治体の運用に違いがあります。

Q. 住んでいる地域の避難情報はどこで確認できますか?

自治体公式サイトで、現在使えるアプリ・LINE・防災行政無線などを確認してください。気象庁の情報も併用できますが、自治体の避難情報とは区別しましょう。

Q. 防災アプリに切り替えれば必ず安心ですか?

必ずしもそうではありません。同じ配信基盤を使っているアプリに影響が及ぶ場合もあるため、自治体が案内している代替手段を選んでください。

Q. クレジットカード番号も流出した可能性がありますか?

アルカディアはSpeeCAN RAIDENで決済情報を取り扱っておらず、今回の漏えい対象ではないと説明しています。ただし、ほかの登録情報の影響は引き続き調査中です。

Q. 怪しい防災メールが届いたらどうしますか?

記載されたリンクや添付ファイルを開かず、自治体の公式サイトへ直接アクセスして確認してください。パスワードや口座情報を求められても入力しないでください。

Q. NET119の不正アクセスで一般の119番電話も止まったのですか?

そのような発表はありません。NET119などの登録情報に漏えいの可能性がある一方、事業者は14日時点で対象サービスを通常通り利用できると説明しています。

Q. 防災メールはいつ復旧しますか?

停止中のサービスについて、統一した再開日は示されていません。最新状況は自治体と運営会社の正式な案内で確認してください。

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂 これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

不正アクセスの経緯・漏えいの可能性

アルカディア「SpeeCAN RAIDENへの不正アクセスによる個人情報漏洩の可能性について」

アルカディア公式サイト・不正アクセスに関するお知らせ

共同通信「110自治体、防災メールを停止 不正アクセスで情報漏えいの恐れ」

自治体ごとの停止状況・住民への案内

美濃市「防災・あんしんメールの一時利用停止について」

箕面市「防災情報配信サービスの緊急停止について」

長野市「『長野市防災メール』運営会社への不正アクセスについて」

広島市「メール配信サービス提供事業者に対する不正アクセスに関するお知らせと、本市への影響について」

横須賀市「防災情報メール及び防犯あんしんメール配信サービス等における不正アクセスに伴う個人情報の漏えいのおそれについて」

緊急速報メールと代替的な情報伝達

気象庁「緊急速報メールについて」

気象庁「防災情報」

総務省消防庁「災害情報伝達手段の充実強化」

時事通信「防災情報、伝達手段確保を要請」

消防関連システムへの追加影響

甲府地区広域行政事務組合消防本部「NET119システムへの不正アクセスについて」

ITmedia NEWS「消防の一斉連絡システムに不正アクセス、個人情報漏えいか」


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