金与正氏が2日連続で韓国に警告!なぜ今「拡声器放送」を再開しようとしているのか?

「北朝鮮が韓国に向けて、また拡声器を使うらしい」

そんなニュースを見て、少し不思議に感じた人もいるのではないでしょうか。

ミサイルでも戦闘機でもなく、拡声器です。

しかも、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹、金与正(キム・ヨジョン)氏が2日続けて韓国に警告を発しました。

2026年10月22日の談話では、軍事境界線の全域で新たな対抗手段を待機させ、韓国向けの拡声器も数日以内に待機状態に入ると表明しています。

ただし、拡声器放送がすでに再開されたという発表ではありません。

実は今回の問題は、拡声器だけの話ではありません。

1か月前に起きた地雷爆発、北朝鮮が進める国境の要塞化、韓国軍の警告射撃が複雑に絡み合っています。

なぜ、いったん静かになった南北の境界線で、再び緊張が高まっているのでしょうか。

北朝鮮の金与正氏と南北軍事境界線に設置された大型拡声器を組み合わせたニュース解説イラスト

※ 本文中の画像は、記事の理解を助けるためにAIで制作したイラストです。実際の写真ではなく、人物・場所・状況の表現が実際と一部異なる場合があります。

金与正氏は2日連続で何を警告したのか?

今回の談話で新しく示されたのは、北朝鮮が軍事境界線全域で対抗手段を待機させると警告し、拡声器放送の再開準備を具体化したことです。

2026年9月の地雷爆発から10月22日の金与正氏の警告までの主な出来事を整理した時系列図

10月21日に放送再開を予告した金与正氏は、翌22日にも談話を発表しました。

22日の談話では、新たな対抗手段を任務待機態勢に入れると主張。韓国に向けた拡声器についても、数日以内に待機状態になると述べています。

また、韓国側が対応を誤れば深刻な事態に直面すると警告しました。(聯合ニュース・共同通信)

ここ数日の動きを日付順に並べると、今回の警告がどう強まってきたのかが見えてきます。

日付 起きたこと
9月21日 非武装地帯の韓国側で地雷が爆発し、韓国軍人3人が負傷
10月5日 韓国軍が北朝鮮軍の埋設地雷を原因とする最終調査結果を発表
10月19日 金与正氏が軍事力増強や拡声器放送再開の検討に言及
10月21日 10月中に韓国向け拡声器を稼働させると予告
10月22日 新たな対抗手段と拡声器の待機態勢について改めて警告

(聯合ニュース・調査結果・聯合ニュース・21日の談話・日テレNEWS)

21日と22日の違いにも注意が必要です。

21日は月内の稼働を予告し、22日は拡声器を数日以内に待機状態にすると述べました。どちらも実際の放送開始を確認した発表ではありません。

また、「新たな対抗手段」が具体的に何を指すのかについても、詳細は明らかになっていません。

韓国軍は22日、北朝鮮側の拡声器の通常の整備活動は把握しているものの、新たな武器の設置などは確認していないと説明しています。(聯合ニュース)

つまり、北朝鮮の警告が強まっていることは確かでも、発言の内容すべてが現場で実行されたと確認されているわけではないのです。


そもそも拡声器放送は、なぜそこまで問題になるのか?

南北の拡声器放送は、単に大きな音を流す行為ではありません。

韓国軍の警告放送と南北の宣伝放送の目的の違いを説明する比較インフォグラフィック

相手国の兵士や住民に政治的なメッセージを届け、心理的な圧力をかけるための手段として使われてきました。

韓国側は過去に、北朝鮮の体制に関するニュースや韓国の音楽などを放送。一方、北朝鮮側も政治宣伝や騒音を使った放送を行ってきました。

双方が音を使って相手に圧力をかけるため、「心理戦」と呼ばれることがあります。

ここで、よく混同される二つの放送を区別しておきましょう。

種類 主な目的
軍の警告放送 境界線への接近や越境に対して退去などを求める
宣伝・心理戦放送 相手側の兵士や住民に情報や政治的メッセージを届ける

今回、韓国軍が実施していると説明する警告放送は、北朝鮮軍の越境に対応するためのものです。

これに対し、北朝鮮が再開を予告した対韓国拡声器放送は、相手側に圧力をかける宣伝・心理戦の手段です。

同じ拡声器でも、使う目的が違います。

では、なぜ武器ではない放送が問題になるのでしょうか。

大きな理由は、放送が軍事的な対抗措置と結びつきやすいことです。

一方が放送を始めれば、もう一方も対抗放送を検討する。音量や内容を強めれば、相手側の反発も大きくなります。

さらに、境界地域で暮らす住民にとっては生活への影響も無視できません。

韓国政府は10月22日、双方が拡声器を運用していた時期には境界地域の住民が深刻な苦痛を受けていたと指摘しました。(聯合ニュース)

拡声器の再開は、外交的な対立を音によって可視化するだけでなく、現場の人々の暮らしにも影響する問題なのです。


韓国軍はなぜ北朝鮮側に警告射撃をしているのか?

韓国軍が説明している警告射撃の目的は、軍事境界線を越えた北朝鮮軍の兵士に退去を求め、越境を防ぐことです。

南北軍事境界線と非武装地帯の位置関係、境界付近での工事と警告行動を示す概念図

ここを理解するには、朝鮮半島の境界線の仕組みを知る必要があります。

軍事境界線と非武装地帯は違う

朝鮮半島には、1953年の朝鮮戦争休戦協定に基づく軍事境界線(MDL)があります。

その周囲に設けられた幅およそ4キロメートルの区域が、非武装地帯(DMZ)です。

名前に「非武装」とありますが、周辺には監視施設や軍事設備があり、地雷も多数残っています。

そして、朝鮮戦争は休戦協定によって戦闘が停止したものの、南北間で正式な平和条約が結ばれたわけではありません。

境界線付近で何が起きている?

北朝鮮は韓国との境界線で、鉄条網や障壁を設置する「要塞化」工事を進めています。

この工事の過程で北朝鮮軍人が軍事境界線を越えるケースがあり、韓国軍は警告放送や警告射撃で対応していると説明しています。

韓国国防部は10月20日、こうした行動を境界線の侵犯を防ぐための防衛的措置だと主張しました。(聯合ニュース)

一方、北朝鮮の説明は正反対です。

金与正氏は、国境の要塞化は自国の安全を守る正当な行為であり、韓国軍の警告放送や警告射撃こそが緊張を高めていると主張しています。

北朝鮮軍が境界線を侵犯したという韓国側の判断も認めていません。(聯合ニュース)

つまり、双方は同じ現場で起きている行動を、それぞれ別の意味で受け止めているのです。

韓国側は「越境への警告」と説明し、北朝鮮側は「工事を妨げる威嚇」だと非難しています。

この認識の違いが、現場の緊張を高める大きな要因になっています。


1か月前の地雷爆発は、今回の対立とどうつながっている?

今回の緊張を理解するうえで欠かせないのが、2026年9月21日に発生した地雷爆発です。

2026年9月の地雷爆発について韓国軍の最終調査結果と北朝鮮側の否定を区別した比較図

韓国軍によると、軍事境界線の南側にある非武装地帯で地雷が爆発し、韓国軍人3人が負傷しました。

そして10月5日、韓国軍は国連軍司令部との共同現場調査や科学的鑑定を踏まえ、北朝鮮軍が軍事境界線の南側に人為的に埋設した対人地雷が爆発の原因だったと最終判断しました。(聯合ニュース・KBS WORLD)

一方、北朝鮮は韓国側の調査結果を否定しています。

両者の立場を整理すると、次のようになります。

争点 韓国側 北朝鮮側
地雷爆発の原因 北朝鮮軍が埋設した対人地雷と最終判断 関与を否定
境界線付近の工事 越境や地雷による危険を問題視 自国の安全のための正当な工事と主張
韓国軍の警告射撃 越境防止のための防衛措置と説明 北朝鮮軍への威嚇だと非難
拡声器放送の再開 緊張を高める行為として懸念 韓国側への対抗措置と位置付け

金与正氏は9月末、韓国側の調査を批判し、北朝鮮側の責任を認めない姿勢を示しました。これは北朝鮮側の主張であり、韓国側の調査を否定する証拠が確認されたという意味ではありません。

ただし、韓国軍が人為的な埋設を最終判断したことと、特定の韓国軍人を負傷させる目的まで立証したことも同じではありません。

地雷の出所・埋設状態と、地雷を置いた人物の具体的な攻撃意図は分けて理解する必要があります。

この事故をめぐる責任の対立が、境界線での警戒や警告射撃に対する反発をさらに強めています。

かつて朝鮮半島では、2015年にも地雷爆発をきっかけに南北の対立が強まり、韓国が拡声器放送を再開したことがありました。

今回も、地雷と拡声器という二つの問題が再び結びついています。


昨年まで静かになっていた拡声器が、なぜ再び問題になったのか?

南北の拡声器放送は、2025年6月にいったん停止していました。

2025年の南北拡声器放送停止と2026年10月の北朝鮮による再開予告を比較する図

韓国では李在明(イ・ジェミョン)政権の発足後、北朝鮮との緊張緩和を目指し、6月11日に北朝鮮向けの宣伝放送を中止しました。

その後、北朝鮮側も韓国に向けた騒音放送を停止しています。

韓国軍は同年8月、境界地域に設置していた固定式拡声器の撤去も実施しました。一方、北朝鮮側では既存設備の撤去が確認されていないと報じられています。(聯合ニュース)

では、なぜ1年余りで状況が変わってしまったのでしょうか。

背景には、北朝鮮の対韓国政策の変化があります。

北朝鮮の金正恩総書記は、2023年末以降、韓国を協力や統一の対象ではなく、敵対する国家として扱う姿勢を強めてきました。

境界線を「永久的な国境」として要塞化する動きも、この政策とつながっています。(朝鮮日報)

北朝鮮側の説明では、要塞化工事は南北の境界を明確にし、軍事衝突を防ぐためのものです。

しかし、韓国側は工事に伴う越境や地雷の危険性を問題視しています。

2025年に放送を停止したことと、2026年に境界線での軍事的な対立がなくなったことは同じではありません。

放送が止まっても、境界線をめぐる根本的な意見の違いは残っていたのです。

それが今回、再び表面化したと考えるとわかりやすいでしょう。


本当に軍事衝突に発展する可能性はあるのか?

金与正氏が強い言葉で警告したからといって、直ちに軍事衝突が起きると決まったわけではありません。

軍事境界線での警告放送、拡声器放送の再開、軍事的対抗措置が緊張を高める可能性を示す概念図

今回の問題で警戒すべきなのは、双方が自分たちの行動を防衛措置と考えながら、相手の行動を挑発と受け止める状況です。

そのため、意図しない衝突が起こる危険性もあります。

緊張が高まる過程を、仮に整理すると次のようになります。

  1. 北朝鮮軍が境界線付近で工事を続ける。
  2. 韓国軍が越境と判断して警告放送や警告射撃を行う。
  3. 北朝鮮がその対応に反発し、拡声器放送などの対抗措置を取る。
  4. 韓国側も追加の対抗措置を検討する。
  5. 相互の警戒が強まり、偶発的な衝突の危険が高まる。

これは今後の危険を説明するための想定であり、すべてが実際に起きたという意味ではありません。

10月22日、韓国国防部は北朝鮮が放送を再開した場合、相応の対抗措置を検討できるとの立場を示しました。

ただし、韓国側も拡声器放送を再開するかどうかは、まだ決まっていないと説明しています。(聯合ニュース)

一方、韓国政府は、休戦協定に違反したり軍事的緊張を高めたりする行動をやめ、偶発的な衝突を防ぐための対話に応じるよう北朝鮮に求めています。

現時点では、放送の再開や新たな軍事行動が実際にどの程度行われるかを見極める必要があります。


日本にとっても関係のあるニュースなのか?

今回の動きは、直接には北朝鮮と韓国の軍事境界線をめぐる問題です。

したがって、拡声器放送の再開予告だけで、日本に差し迫った軍事的危険が生じたと判断することはできません。

ただし、朝鮮半島の情勢は日本の安全保障とも深く関係しています。

日本には在日米軍基地があり、米国は韓国とも同盟関係にあります。朝鮮半島の軍事的緊張がさらに高まれば、日本を含む地域の警戒態勢や外交対応にも影響する可能性があります。

今後の状況を理解するには、特に次の点を区別して見ることが大切です。

注目する変化 何を意味するか
北朝鮮が拡声器の整備・待機を続ける 再開準備や政治的圧力の段階
実際に韓国向け放送を再開する 心理戦を再び実施する段階
韓国も対抗放送を再開する 双方の対抗措置が強まる可能性
警告射撃以外の武力行使が確認される 軍事的緊張の質が変わる重大な局面

ニュースでは「警告」「待機」「稼働」「攻撃」といった言葉が並びますが、意味はそれぞれ異なります。

強い発言があったことと、実際に軍事行動が始まったことを同じものとして受け止めないことが重要です。


【結論】このニュースは、こう理解すればいい

金与正氏が2日続けて韓国に警告した背景には、南北軍事境界線をめぐる対立があります。

北朝鮮は境界線の要塞化を進め、韓国軍は北朝鮮軍の越境に警告射撃などで対応しています。さらに、9月の地雷爆発について韓国軍は10月5日に北朝鮮の埋設地雷が原因と最終判断しましたが、北朝鮮はその結果を否定しています。

その中で北朝鮮が持ち出したのが、拡声器放送の再開です。

ただし、2026年10月22日時点で確認されているのは再開予告と待機態勢に関する発言であり、放送が実際に再開されたと確認されたわけではありません。

今回の問題を単なる「拡声器合戦」として見るだけでは、背景にある重要な部分を見落としてしまいます。

注目すべきなのは、南北が境界線をどう位置付け、相手の軍事行動をどう解釈しているかという点です。

双方が相手の行動を挑発だと受け止める状況が続けば、小さな出来事が新たな対抗措置を呼ぶ可能性があります。

だからこそ今後は、拡声器が実際に稼働するのか、新たな軍事的対抗措置が確認されるのか、そして偶発的な衝突を防ぐための意思疎通が進むのかを、分けて見る必要があります。


金与正氏の拡声器警告、気になる疑問から読み解く

Q. 金与正氏とは誰ですか?

北朝鮮の金正恩総書記の妹で、朝鮮労働党の幹部です。韓国との関係について、北朝鮮側の立場を談話などで繰り返し発信しています。

Q. 北朝鮮の拡声器放送はもう始まったのですか?

10月22日時点で、再開したと確認されているわけではありません。金与正氏は月内の稼働を予告し、数日以内に待機状態に入ると述べています。

Q. 拡声器放送は、普通のラジオ放送と何が違うのですか?

相手側の兵士や住民に向けて大音量で情報や政治的メッセージを流し、心理的な影響を与える目的があります。そのため、南北間では心理戦の手段として扱われています。

Q. 韓国軍の警告放送と宣伝放送は同じですか?

違います。警告放送は境界線への接近や越境に対応するためのもので、宣伝放送は相手側への政治的・心理的な働きかけを目的としています。

Q. 9月の地雷爆発では何人が負傷したのですか?

2026年9月21日に韓国軍人3人が負傷しました。韓国軍は10月5日、北朝鮮軍が人為的に埋設した地雷が原因だと最終判断しましたが、北朝鮮は認めていません。

Q. 南北の拡声器放送は、いつ止まったのですか?

韓国は2025年6月11日に北朝鮮向けの宣伝放送を停止し、その後、北朝鮮側も韓国向けの騒音放送を停止しました。

Q. 北朝鮮の新たな対抗手段とは何ですか?

具体的な内容は明らかになっていません。北朝鮮側は任務待機態勢を主張していますが、韓国軍は10月22日時点で新たな武器の設置などを確認していないと説明しています。

Q. 韓国も拡声器放送を再開するのですか?

まだ決まっていません。韓国国防部は北朝鮮が実際に放送を再開した場合、相応の措置を検討できるとの立場を示しています。

Q. 今回の警告で戦争が始まる可能性は高まったのですか?

軍事的な緊張や偶発的衝突の危険が懸念されていますが、警告だけで戦争が始まると判断することはできません。実際の部隊行動や放送再開の有無を確認する必要があります。

今日のニュースほどき、理解の助けになりましたか?🙂

これからも、ニュースの「なぜ?」をやさしく、わかりやすくほどいていきます!


主な情報源

金与正氏の談話・最新の警告

聯合ニュース|10月22日、金与正氏が新たな対抗手段と拡声器の待機を警告

共同通信|北朝鮮が韓国への対抗措置と宣伝放送の準備を表明

日テレNEWS|金与正氏が2日連続で談話を発表

聯合ニュース|10月21日、拡声器放送の再開を予告

地雷爆発・軍事境界線をめぐる対立

聯合ニュース|10月5日、韓国軍が地雷爆発の最終調査結果を発表

KBS WORLD|北朝鮮の埋設地雷を原因とする韓国軍の最終調査

聯合ニュース|韓国軍の警告射撃に対する北朝鮮の反発と韓国国防部の対応

拡声器放送の停止経緯・韓国政府の対応

聯合ニュース|2025年の拡声器放送停止と設備の状況

聯合ニュース|10月22日、韓国政府が対話と偶発的衝突の防止を要請


あわせて読みたい

地雷はなぜ軍事境界線の韓国側で見つかったのか?

今回の緊張の発端となった9月の地雷爆発について、韓国軍は10月5日に最終調査結果を公表しています。地雷の位置や材質、自然流出ではなく人為的な埋設と判断した根拠を整理した記事です。

北朝鮮の地雷が軍事境界線の南側に?韓国軍が「人為的に埋設」と最終判断した3つの根拠

あわせて読みたい